
ストレスとは、俗に精神的緊張をいいます。このストレスの原因となるストレッサーは実にいろいろあります。
第1は、温度や湿度、雑音や騒音、身体に感じる振動、また点滅するまぶしい光や車の排気ガスなどの物理化学的な外的ストレスです。
第2は、偏食やダイエット、食べ過ぎなどの食事、不規則な睡眠や睡眠不足、細菌やウイルスなどによる感染、慢性あるいは強度な疲労などの生物学的な内的ストレスです。
第3は、個人個人がいろいろな役割を果たす社会生活の中で生じる心理的・社会的ストレスです。このストレスの強弱は一概にはわかりにくいものです。そのストレスの程度を示すものとして、 ある事柄に必要な努力と時間を考慮し100を最大とした数値があります。例えば、配偶者の死は100、離婚は73、別居65、家族の死63、自分の病気や傷害は53、結婚50、解雇47、退職45、家族の健康の害は44、仕事の配置転換36、上司とのトラブルは23、睡眠習慣の変化16、食習慣の変化は15などとなっています。


私たちの身体の働きは外的環境と大いに関連しており、さまざまに変化します。
外的刺激が加えられると身体に歪みが起こります。これがストレスです。しかし、身体は外的刺激に対して適応能力を備えています。身体に受けるストレスの強さに応じて、中枢神経や自律神経、またホルモンなどを分泌する各器官、免疫系器官などが働き、身体を生理的に正常な状態に維持しようとします。これを身体の恒常性(ホメオスタシス)といいます。しかし、そのとき身体は正常な状態からはずれて元へ戻ろうとする時に身体に変化が現れます。これが、ストレスによる身体への影響です。


身体に強いストレスがかかると、強い刺激が脳の間脳視床下部に伝えられます。ここには、ホルモンを分泌する内分泌系の中枢があり、脳下垂体から副腎皮質などを刺激するホルモンの分泌が急増します。すると対応する器官のホルモン分泌が増加して、栄養物を身体の各部に届け老廃物を集めて排泄する循環器系に働きかけます。また、食べた物を分解・吸収、貯蔵する消化器系や、心臓から動脈、静脈を通る血管系などにも働きかけます。さらに、白血球などに影響して免疫力を低下させるような大きな作用を及ぼします。一方、自律神経系の中枢にも作用して、交感神経や副交感神経が各臓器や器官に働きかけ、その結果ストレス病になるのです。

湿疹、多汗症、じんま疹、アトピー性皮膚炎や円形脱毛症などはストレスが原因で起こるといわれています。皮膚の変化は、内臓の病的変化の影響を受けて表われることが知られています。糖尿病は、炭水化物や脂肪などの代謝障害と血管障害のために皮膚に湿疹や掻痒症や黄色腫などが起こります。肝臓の場合はメラニン色素の増加によるシミや、血管拡張のために手掌紅斑やクモ状血管腫などがみられます。腎臓では血液中の窒素量増加のため掻痒症などがみられます。そのため、ストレスによって、肌あれやシミや吹出物などの症状が現れるのです。

髪は皮膚に付属している器官ですから、ストレスを受け皮膚の働きが悪くなると、髪にも影響がでてきます。人での臨床実験は今まではありませんが、人と同じヘアサイクルをもつモルモットを使って、社会心理的ストレスという過密環境ストレスの動物実験で、毛髪への影響を調べた結果が最近、日本皮膚科学会誌に報告されています。
『正常ではケージに2匹飼うところを10匹飼うという過密環境ストレスの実験です。ストレス群では毛の伸びは正常群の86%、毛の太さは75%になり、有意に少なかった。また、ストレス群の毛髪は正常群と違って、白い模様がかなり生じ、その部分は毛髪の損傷はないがメラニン色素が抜けていた。また、皮膚の働きを示す6つの酵素のうち3つがストレス群では活性が89%、86%、76%と有意に少なく、機能が明らかに低下していた。このように弱いストレスでも、髪の伸びが少なく、太さが細くなるのは、ストレスによって神経系やホルモン分泌系の機能が抑えられ、乱された結果と考えられる』(日本皮膚科学会誌より抜粋)といった内容のものです。
この実験結果は、人にも当てはまります。人も場合もストレスを受けることによって、毛の寿命が短くなり早く抜けてしまいます。そのため正常なヘアサイクルに変化が起こり、従来のサイクルよりも短縮されてしまいます。その結果、脱毛しやすくなり、さらに新しく生えてくる毛も細くなり、薄毛になっていくと考えられます。 |