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    昭和大学医学部教授

長谷川 紘司 先生

はせがわ・こうじ
1939年生まれ。医学博士。’64年、東京医科歯科大学歯学部卒。’68年、東京医科歯科大学大学院修了後、東京医科歯科大学助手、講師を経て、’72年、文部省在外研究員としてスイス、ジュネーブ大学に。’77年より昭和大学教授。日本歯科医学会常任理事、日本歯周病学会会員。

 口のにおいは、自分では気がつかないものです。臭覚は、五感の中でももっとも適応性が高く、本人が気づかないのは当たり前。いつも一緒に暮らしている家族にしても慣らされてしまっていることが多いのです。しかし、第三者にしてみれば、かなりインパクトがあるのが口臭です。
 とはいえ、第三者が本人を前にして「口が臭いよ」とはいえないのも事実。これはもう、愛するダーリンのために、奥様が一肌脱ぐしかありません。ただし、非常にデリケートな問題なので、アドバイスのしかたも相手の性格に応じて対処する必要がありそうです。

 口臭は、加齢と無関係ではありません。口の中の健康度も、年をとるにつれて悪くなるからです。加齢現象に加えて、話すことや行動することが少なくなったりと、社会的活動の機会が減ると、唾液の分泌が減少し、老人性の口臭が出てきます。しかし、30代、40代、50代の男性にとっては老人性の口臭というよりは、それ以外の原因が考えられます。

 まず、食べたものが口の中に残って、それがにおいを発する場合です。食べかすに含まれるタンパク質が、口の中の細菌によって分解され、口臭を発生させます。口の中には300〜400種類もの細菌がいるのです。 口中の細菌数は、唾液分泌の低下しているときには多く、食後はむしろ少なくなります。また、リラックスしたときよりも緊張したときのほうが唾液分泌が低下し、こういったときに口臭を感じやすくなるのです。朝起きたときに口臭を感じやすいのも、寝ている間は唾液の分泌が低下するためです。
  また、舌の表面にも細菌やカビ(舌苔(ぜったい))がつきやすいので、歯の清掃とともに舌もきれいにするようにアドバイスしましょう。

歯の汚れを放置しておくと、やがて歯垢(しこう)が歯の表面に付着し始めます。歯垢1ミリグラムの中には、約1億もの細菌がいるといわれ、これらのうち、歯間や歯と歯ぐきの間で繁殖した細菌が毒素や酵素を出して、歯肉炎を引き起こし、出血します。
  この状態を放置しておくと、炎症が深部にまで広がり、歯周病へと進行します。この歯肉炎、歯周病が口臭の原因の大多数を占めているのです。
  また、義歯やブリッジを使用している人は、みがき残しによる口臭が発生しやすくなります。とくにプラスチック製のものは安定性に乏しく、吸水性があるため、汚れを吸い取りやすいという欠点があります。まめに手入れするよう、ご主人に注意してあげましょう。

        
歯肉炎、歯周病から口臭が。とくに40〜50歳代以上の人はほぼ全員歯周病になっていると考えてもいいほど。常に歯肉の状態をチェックしておこう。
    
歯みがき(ブラッシング)をおろそかにすると、食べかすで細菌が繁殖。生ゴミを放置すると腐ってにおいを発散するのと同じ。食後の歯の清潔を励行しよう。

     
義歯やブリッジをしていると、汚れが多く、それが原因に。とくにプラスチック製のものは汚れを吸い取る性質がある。手入れを念入りに。
 
朝起きてすぐ、食後2〜3時間後、おなかがすいているとき、緊張したときにも口臭は発生する。いずれも唾液の分泌が少なくなることによる。
お酒を飲んだり、にんにくなどを食べた後で発する口臭は一時的。においの物質が血中に取り込まれ、肺に移動してにおいの成分が呼吸器から発散。口臭予防のガムなど有効。
加齢による口臭の発生。年をとるにつれ、話す機会が減り、行動範囲も狭くなってくると、唾液の分泌量が減少。そのために老人性の口臭が発生する。
全身的な病気が要因となることも。慢性気管支炎、気管支拡張症、肺壊疸、慢性の蓄膿症、扁桃炎、出血を伴う胃潰瘍、糖尿病、肝機能障害など。

 口臭の原因となる成分は、硫化水素、メチルメルカルカプタン、ジメタルサルファイドの3つ。これらには揮発性硫化物が含まれているため、強いにおいを放ちます。口臭の程度は、この揮発性硫化物の量で判定します。2〜3ng(ナノグラム。1ナノグラム=1グラムの10億分の1)は要注意、3〜5ngの場合は口臭あり、5ng以上になると口臭が強いとされています。
  口臭を取り除くには、一にも二にもブラッシングで口の中を清潔に保つことです。毎食後、1日3回が理想です。職場でも食べたらみがく習慣をつけ、また、ごはんでもお菓子でも、食べたらすぐに水やお茶などで歯を洗うように注意しましょう。歯の間にものがはさまったら、デンタルフロスや歯間ブラシを使用してください。これらをいつも携帯しておくようにすると便利です。
  歯みがきは歯をみがくのが目的ではなく、歯の汚れを落とし、同時に歯ぐきをマッサージするのが目的です。正しいブラッシング法を二人で確かめあいましょう。

●自臭症に注意
 口臭は本人にはなかなか気づかないものですが、それほど口臭がないにもかかわらず、自分の口は臭いと思い込んでいる人もいます。これを「自臭症」と呼んでいます。 このような人は、過去に友人などから「口が臭い」と指摘され、傷ついた経験がある人に多いようです。以来、自分の口は臭いと思い込み、会社の同僚と話すことも怖くなったという人もいます。 こうしたケースは、思い込みの場合が多いので、自分だけで思い悩まず、専門医を訪れ、相談してみることです。行動療法などで、この思い込みを解消できるかもしれません。




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