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ドイツではハーブは薬局で買うものなのです

セントラル薬局局長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セントラル薬局(ドイツ・ロッテンブルク) 局長/薬剤師 アッセンハイマー 慶子先生

医薬分業発祥の地として知られるドイツで1997年より薬局を経営するアセンハイマー先生。

薬剤師として日々現場に立ち地域に暮らす人たちと活発なコミュニケーションを図るなかで見えてきた日独の薬局のあり方の違いは。

 

このほど講演などのために来日されたその合間をぬって直撃取材させていただきました。

ドイツ薬事博物館

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アセンハイマーさんの講演にもたびたび登場するドイツ薬事博物館(ハイデルベルク)。 ドイツの調剤薬局の歴史資料が展示されている。

 ドイツにかかりつけ薬局が浸透している理由は?

 

ドイツは“ハーブの国”と言われていて、薬局ではたくさんの種類のハーブが量り売りされています。種類は平均で100くらい。多いところで200とか300くらいでしょうか。患者さんは10g単位で購入することができます。ハーブは薬として買うこともありますし、嗜好品や香辛料として買うこともあります。

 

なぜ薬局で買うかというと、薬局のハーブは品質が保証されているからです。ハーブというものはどこで収穫されたかによって成分や汚染度も違います。スーパーや食材店で売られているハーブは、品質がよくないというわけではありませんが、検査証が付いておらず、従ってクオリティーの保証がない。一方、薬局で扱うものは入荷時点で販売元の検査証がついており、さらに薬局で確認試験をしないと販売できないことになっています。ですから安心して様々なハーブが買える。ドイツではこのケースに見られるように、暮らしの身近なことを通して、行きつけの薬局が浸透する仕組みができあがっているのです。

化学式

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インタビュー中に化学式を書いて説明していただきました。。。

生活の知恵として根付いてきたハーブ

 

以前、NHKの『ごちそうさん』という朝ドラで話題になった、たんぽぽコーヒーもドイツ発です。

義理の母によると、戦時中の物がないときには他の植物の根っこも炒って使っていたそうです。彼女はドイツ人で今も一緒に住んでいますが、やはり植物に詳しいですね。“薬草おばあちゃん”です(笑)。

ドイツは、“ハーブの国”で、元々薬草に関心が高い国民性ということもありますが、何かあったときに自分たちで何とかしなければいけないという危機感はあったと思います。戦争も多く経験してきた国ですから、食糧難もあったでしょう。必要に迫られて、どのような植物が役に立つとか、立たないとかということが、生活の知恵として根付いていたのだと思います。 

 

ハーブは、お茶にして飲む以外に冬の時期は体を温めるため、赤ワインにお砂糖といっしょに入れて煮込むホットワインの薬味としても使います。日本でいう「おとそ」のような感じです。

多くの薬局は薬味のオリジナルレシピを持っていて、あらかじめミックスしたものを小さいバッグにつめて販売します。一般の店では、ハーブ製品が完成商品として並べられているので、それぞれの材料を少量ずつ購入することはできないのですが、薬局では原材料の状態で置いてあるので、多くの種類を少量から購入することもできます。この小分け販売というのもドイツの薬局の魅力なのです。

 

わからないことがあったらまず薬局へ

 

ドイツの薬局では、訪れる患者さんから様々な質問がきます。それは薬剤師が、科学知識を備えているということがヨーロッパの人たちには周知のことで、何かわからなかったらまず薬局で聞こうというのが当たり前になっているからです。日本の薬剤師も同様で本当にすごいと思う。6年間も勉強するから膨大な知識量ですし、仕事量や対応のきめ細かさ、気づかいなどはドイツにはないものでしょうね。このあたり、ぜひ日本の患者さんにも知っていただきたいです。ただ、調剤業務が非常に煩雑なので、患者さんから処方せんをいただき、薬をおわたしするまでにそれなりの時間がかかります。その時間がもう少し短縮できて、薬剤師の時間負担が減るようなシステムに変われば、その豊富な知識を活かしてゆっくりと患者さんの相談に乗ったり、もっと丁寧に服薬指導ができたりするようになると思うのです。

 

「薬局の日」では広く地域文化も応援します

 

最近、日本でも薬局が健康講座などを実施するのは珍しくありませんが、ドイツでも薬局による健康をテーマにしたイベントが開催されています。薬剤師会にあたるABDAという組織が企画し、全国統一テーマで行う 「薬局の日」もその1つです。当薬局で実施する場合は、案内チラシを作って、一週間くらい前から患者さんに配ります。薬局の重要性を全国一斉にアピールするこの「薬局の日」はお祭りの日でもあるので、子ども向けに薬局を舞台にした人形劇を上演することもあります。ドイツには、「カスパー」という人気キャラクターがあり、その人形を持った地元の劇団とコラボレーションします。このように子どもから大人まで参加できるようなイベントの開催を通じて、薬局が地域文化を応援するという目的も果たせるのです。

 

薬局主催のイベントは店頭にとどまらず、公民館や集会所など、テーマに応じて相当の施設を借りて開催することもあります。専門家に来ていただくこともあり、当日は参加者が演者に直接質問できたり、テーマに合った製品をその日だけ特売にしたりして、地域の皆さんにも好評です。

取材・文:武藤英夫

アッセンハイマー 慶子先生

セントラル薬局(ドイツ・ロッテンブルク) 局長/薬剤師

1986年神戸女子薬科大学(現神戸薬科大学)を卒業後、同年ドイツのチュービンゲン大学薬学部大学院に入学。91年同大学院卒業。ドイツの薬局で1年間の実務実習を受け、ドイツの薬剤師試験に合格。製薬会社勤務後、97年南ドイツのロッテンブルクに薬局を開設。地域に根ざした薬局づくりに奮闘中。2003年からドイツ薬学視察旅行の受け入れなどを通じて、ドイツの薬局関連情報を提供している。