
毎年3月1日から3月8日は「女性の健康週間」です。女性の健康づくりに欠かせない「フェミニンゾーン(外陰&腟)」のケアですが、尿もれや、生理用ナプキンのかぶれなど、フェミニンゾーンに悩みをもつ女性は意外と多いもの。なかなか人に相談できないあれこれを、女性医療のスペシャリスト、関口由紀先生に座談会形式でお聞きしました。尿もれなどを解消する「骨盤底筋トレーニング」を紹介した前編に続き、後編はフェミンゾーンのケアについて詳しくご紹介します。
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<座談会の参加者>
Nさん(42):未婚、出産経験なし
Kさん(33):既婚、出産経験なし
Yさん(48):既婚、一児の母
かぶれ・かゆみに悩む人は多い。おりものシートのつけっぱなしはNG
Kさん:私は生理のたびにフェミニンゾーンがかぶれてしまうんです。
関口先生:生理中にかぶれ・かゆみがあるという人は、まず生理用ナプキンの種類を変えてみましょう。また、単価は少し高いですが、肌に優しい尿もれ用パッドを試してみては。それでもダメな場合は、布ナプキンや、腟に入れるシリコン製の生理カップというものもあります。生理カップは、海外ではずいぶん広まっています。
Kさん:ほかに注意すべきところはありますか?
関口先生:個人差がありますが、コーヒー・紅茶・チョコレートなどに含まれるシュウ酸がかぶれによくないという説もあります。毎日食べている嗜好品を、生理前後だけやめてみるというのもよいかもしれませんね。
Yさん:私は年中おりものシートを使っているのですが、これはどうなんでしょう。
関口先生:それはよくないですよ。排卵前後のおりものが多い時はシートを使って、それ以外はコットンの下着そのままがベスト。汚れますから、1年くらいで下着を買い換えればいい。フェミニンゾーンは湿っているのが普通なの。おりものの汚れはあって当たり前なのです。
フェミニンゾーンは第2の顔。VIOの陰毛はなくてもいい
Yさん:今、VIOを処理する人が増えていますよね。体にとって、陰毛はなくてもいいものなのでしょうか? 守ってくれていると思っていたのですが。
関口先生:それは文化もあるのですが、全部処理しても全然OK。フェミニンゾーンは第2の顔と言われていて、顔と同じで歳をとるとたるんできます。陰毛があると気にしないでしょ。フェイスケアをするように、フェミニンゾーンも定期的にきれいにしておいたほうがいい。そうすれば、変化にも気づきやすくなり、結果的には体によいということになりますから。
Kさん:自分でカットするとチクチクしそうで怖いです。
関口先生:剃った後、3ミリ前後のときにチクチクするんですよね。だから生やす部分は、毛を1、2センチ残して、生やさない部分と区別をする。ちゃんとケアしていれば、あまりトラブルにはならないですよ。
Yさん:先生、これはちょっと珍しいのかもしれませんが、私は最近、乾燥している時や、雨が降る前なんかに、お産の傷が痛むんです。
関口先生:それは、骨盤底筋が硬くなっちゃっているんです。だからまず、緩めないと。骨盤底筋トレーニングは、そういう慢性的な痛みにもよいですよ。また、腟マッサージをして、痛いところをもみほぐすのもいいですね。お風呂から出た後に保湿剤をつけて軽くマッサージするといいです。
Yさん:なるほど……。骨盤底筋トレーニングとVIO脱毛、やらねばですね!
性的タブーの考えがフェミニンゾーントラブルの一因だった
Nさん:日本人女性特有の性的タブーが根強いなか、近年はこうしたフェミニンゾーンについての情報がオープンになっているのを感じます。
関口先生:日本は明治時代から、男女の性愛を否定して社会を形づくってきたという背景があって、つい最近までは、自分のものなのに「フェミニンゾーンに触れてはいけない」という概念が残っていました。親も触ったことがないから子に伝えない。こうしたタブーから、病気も引き起こされていたわけです。本来は、自分のからだのために、フェミニンゾーンに触って、確認することが大切。これは、人生を自分で決めることの第一歩だと考えています。「それをやらずして、真の幸福はない」とまで言い切りますよ、私は。
Nさん:女性にとって一番大切な場所ですものね。
関口先生:そうですね。「一番大切なところを自分で触るな」ということはつまり、支配されていたということです。支配からの解放。ただ自由は責任が伴うので大変です。自分でケアをする、人任せではいけないということですね。
関口先生が実践しているケアは?
関口先生:私のデイリーケアは、専用の洗浄オイルを、湯船から出た後にフェミニンゾーンに塗布。腟内には塗りませんが、特に小陰唇はクリトリス周囲のヒダに優しく塗り込みます。その後、髪や体、顔を洗い、最後にオイルをお湯で流します。入浴後は、エイジングケアのオイルを腟(手指の第2関節くらいまで)と外陰部に塗布。この時に骨盤底筋群の動きを確認し、引き締めます。年齢を重ねてもQOL(生活の質)を維持するためには、日々の習慣が大切。フェミニンゾーンのケアを、今からぜひ始めてみてください。

監修/関口由紀(せきぐち・ゆき)先生
女性医療クリニックLUNAグループ理事長。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本東洋医学会専門医・指導医、博士(医学)、経営学修士。横浜市立大学の客員教授も務める。