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花粉症で咳や発熱、頭痛、のどのかゆみも! 医師がすすめる自分に合った対処法

花粉症シーズンのまっただ中。3月でスギ花粉は一段落しそうですが、今度はすぐにヒノキ花粉が飛び始めるため、4月中は対策が必要です。花粉症の症状は、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、目のかゆみだけでなく咳、発熱、頭痛などもあります。花粉症の治療法や市販薬について、耳鼻咽喉科の松脇由典医師に聞きました。Q&A形式でお届けします。

《 SELF CARE 》花粉症で咳や発熱、頭痛、のどのかゆみも! 医師がすすめる自分に合った対処法

Q:目や鼻以外にも、咳やのどのかゆみなどの症状が現れるのですが、これも花粉症のせい?

 花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、目のかゆみですが、それ以外にも次のような様々な症状が現れます。

 

●咳…気道全体の過敏性が高まるため、痰の絡まない乾いた咳が出やすくなります。

●のどのかゆみのどの粘膜に花粉が付着し、アレルギー反応が起こることでかゆみが生じます。いがらっぽさを感じることも。

●発熱体内に入った花粉に対するアレルギー反応で熱が出ることも。37度台前半の微熱で、高熱になることはほとんどありません。

●眠気体のアレルギー反応で眠気を引き起こすことも。鼻づまりによる睡眠不足も要因に。

●頭痛粘膜の炎症から、まれに頭痛や頭の重さを感じることも。ただし、痛みを伴う副鼻腔炎に至ることは極めて珍しいです。

●肌荒れ花粉の付着により、まぶたや頬、首などの皮膚が炎症を起こす「花粉皮膚炎」になることも。季節的に乾燥しやすく肌のバリア機能が低下することも一因に。かゆみが出て赤く腫れ、発疹のようになる人もいます。花粉皮膚炎は花粉症の時季だけのもので、長引く場合はアトピーの可能性があるので、皮膚科の医師に相談を。

●口のかゆみ花粉と抗原性が似ている果物や野菜、例えばスギ花粉ならりんごやさくらんぼを食べると口の中やのどがかゆくなる口腔アレルギー症候群を発症する人もいます。これは季節に関係なく起こり、アナフィラキシーショックのような重篤な症状を起こす危険性もあるため、特定の果物や野菜を食べて異常を感じたらアレルギー専門の医師に必ず相談しましょう。

 

 また、これらの諸症状が原因となり、集中力が低下したりイライラしたりするのも、花粉症の特徴といえるでしょう。

Q:花粉症の治療法を教えて。

 花粉症の治療法は、スギ花粉症では4段階に分けられます。どの治療で対応するかは、自分にとって花粉症がどのくらい重篤なものか、生活の質(QOL)をどの程度低下させているかで選択するとよいでしょう。例えば林業従事者など、花粉が多い場所で集中力を要する仕事をしている人は、より高度な治療を受けることをおすすめします。逆に症状があまりひどくなく日常生活に支障が出ていないのであれば、マスクをしたり、外出を控えたりすることで十分な場合もあります。

 

①投薬療法…症状に合わせた薬を使用することで症状を緩和する。

②免疫療法主に行われているのが舌下免疫療法で、舌の下に抗原エキスを含む薬剤を保持し、1、2分後にのみ込むことでアレルギー反応が現れにくい体質をつくる。

③手術療法…くしゃみや鼻みずの司令を出す神経を切断する後鼻神経切断術を行い、アレルギー反応を抑える。鼻中隔弯曲症や粘膜が厚くなった肥厚性鼻炎などを伴っている場合も、形態改善手術を施して鼻のつまりを治すことができる。

④抗体療法…昨シーズンから認められた最新の治療法。抗IgE抗体を月1回注射することで、体内にあるIgE抗体をなくしアレルギー反応を抑える。

Q:市販薬を選ぶ時のポイントは?

 忙しくて医療機関に行く時間がとれない場合や急な症状で何とかしたい時に、ドラッグストアなどで購入できる市販薬は生活者の強い味方。市販薬は効き目が弱いと思われがちですが、近年、病院など医療機関でもらう薬と同じ成分を同じ量で、安全性も十分考慮したうえで配合した「スイッチOTC」が増えています。

 

 配合されている成分を知ることは、薬選びに役立ちます。箱の裏面や添付文書は確認するようにしましょう。花粉症の薬によく使われている抗ヒスタミン薬には第1世代と第2世代があり、それぞれ効き方が異なるので、この違いを知っておくだけでも、自分に合う薬を賢く選択できます。

 

 第2世代抗ヒスタミン薬は、第1世代より眠くなりにくいなど、副作用が出にくいことから使用する人が増えています。服用回数が1日1回のものや、服用後の自動車の運転が認められているもの、水なしでのめるものなど様々な種類がありますので、より自分のライフスタイルに合ったものを選びましょう。

 

 同じ薬でも人によって症状の改善や副作用に違いが生じます。選択肢も増えているので、合わない薬は無理に続けず、薬剤師に相談しながら自分に合う薬を探してください。

抗ヒスタミン薬の違い

Q:市販薬を使い続けても大丈夫?

 花粉症の症状に対する薬を効果的に使用するには継続が大切。毎日の服用で症状をブロックする状態が維持できるのです。また、花粉症シーズンの3カ月程度の使用であれば、依存性の心配もありません。

 

 ただし、注意が必要な場合もあります。血管収縮成分の入った点鼻薬は使用頻度が異常に増えてしまうと逆に悪化することも。また、解熱鎮痛剤や咳止め、かぜ薬などと同時に服用すると、成分が重複して副作用が現れることもあります。花粉症の薬に限らずどの薬にも言えることですが、市販薬で症状が改善しない、あるいは使用に不安がある場合は医師や薬剤師に相談すること。そして用法・用量を守り正しく使うことが肝要です。

監修者/松脇由典先生(まつわき・よしのり)

東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。同大学耳鼻咽喉科講座講師などを経て、2016年松脇クリニック品川を開院。長年にわたり鼻科を専門とし、好酸球性副鼻腔炎に対する治療や内視鏡手術を得意とする。日本鼻科学会「嗅覚障害診療ガイドライン」の作成メンバーとしても活躍。