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更年期に乱れやすい腸内環境。つらい便秘の予防・解決策を専門医が解説

理想的な腸内環境を保つ上で、便秘は大敵。「便秘=悪玉菌優位」となります。加齢と共に筋力や体の機能が低下すると、ぜん動運動も自然と低下し、便秘になりやすい状態に。このため、高齢になるに連れ、善玉菌よりも悪玉菌が優位になる傾向があることが分かっています。加えて、男性よりも女性が便秘になりやすいのは、女性特有の要因も影響しています。

《 SELF CARE 》更年期に乱れやすい腸内環境。つらい便秘の予防・解決策を専門医が解説

Q:更年期の女性は、便秘になりやすいって本当?

 更年期は、女性ホルモンのバランスが崩れて自律神経が乱れがちになります。すると、自律神経によってコントロールされているぜん動運動も悪くなり、便が滞りやすくなります。また、更年期には倦怠感や気分の落ち込みなどの不調が現れやすいため、ついつい体を動かす機会が減ってしまいがちになることも便秘を招くと考えられます。その他、月経前に便秘になる女性も多いのは、女性ホルモンのプロゲステロンの分泌が高まることで、ぜん動運動が抑えられてしまうからです。

 

 便秘を「いつものこと」と放っておくと、さらに悪玉菌がどんどん増えて悪循環になってしまいます。便秘になりやすい年齢や時期を意識して、腸内環境を整えるケアを心がけるようにしましょう。

Q:腸内環境を整えるには?

 腸内環境を整えるために積極的に摂っていただきたいのが発酵食品と食物繊維。ヨーグルト、キムチ、みそ、納豆、漬物などの発酵食品には、乳酸菌などの善玉菌が多く含まれているため、これらを食べて腸内の善玉菌を増やしましょう。

 

 また、善玉菌が喜ぶような食材を多く摂ることも大切。海藻類、根菜類の野菜、穀物、果物、きのこ類、大豆などの食物繊維は善玉菌の大好物です。食物繊維は便のかさを増やしてぜん動運動を促す他、便を軟らかくして排便を促すので、腸内をキレイにするのにも効果的です。みそ汁に野菜やきのこ類などの具材をたっぷり入れていただくのもおすすめです。

 

 善玉菌の好物の食材がたくさんあると、善玉菌と悪玉菌のどちらを応援しようか様子を見ていた日和見菌が善玉菌の味方になり、腸内環境が整いやすくなります。

 

 一方、甘味類や動物性タンパク質を多く含む肉類などは悪玉菌を優勢にしてしまうので、食べ過ぎには注意してください。もちろん、発酵食品や食物繊維だけを食べればよいというわけではありません。偏った食事を続けると悪玉菌を増やしてしまうので、主食、主菜、副菜、汁物を組み合わせたバランスのよい食事を心がけながら、発酵食品と食物繊維を多めに取り入れていきましょう。

 

 また、朝は少し早めに起きて朝食をゆっくり食べる余裕をもつようにすると、ぜん動運動のスイッチが入りやすくなり、便秘の改善にもつながります。「継続は力なり」です。毎日の食事を意識して、少しずつ腸内環境を変えていきましょう。

 

Q:便秘改善に有効なストレッチは?

 スムーズな排便を促すために軽い運動も心がけましょう。特にデスクワークなど同じ姿勢で過ごすことが多い人は、腸の動きも滞りがち。いすに座ったまま腰を左右にひねるだけでも、腸への刺激になり、便秘改善に役立ちます。休憩も兼ね、こまめに取り組むとよいですね。

 

 その他、ウォーキングもおすすめです。ストレスによってぜん動運動が乱れることもあるので、腸に刺激を与えるだけでなく、ストレス発散にも有効です。

Q:便秘薬ののみ方で注意することは?

 市販薬には主に、大腸を刺激してぜん動運動を促すタイプと、便の水分や量を増やして便を軟らかくするタイプの2つがあります。便秘の患者さんの中にはスッキリ感を味わうために、用法・用量を超えて過剰に使用し、下痢をしてしまう人がいます。しかし、こうした便は良い腸内細菌も一緒に排出してしまうので、腸内環境を良好にするのには逆効果になることもあります。

 

 便秘改善の基本は食事と運動。薬は本来の排便リズムを取り戻すきっかけに使用し、常用するのは避けましょう。薬の効き目には個人差があるので、市販薬を選ぶ際は、薬局やドラッグストアで相談し、用法・用量を必ず守って使用してください。

 

 またダイエットティーなどとうたわれているお茶は体に優しいイメージがありますが、下剤と同じ作用がある物も。下痢や腹痛を伴う場合は、腸に負担がかかるので、のむのを控えましょう。

Q:40代以降の大腸がんに要注意?

 がんの中で女性の死因第1位となっている大腸がんは、40代から発症率が高くなっています。便秘といっても、排便が頻回で少量しか出ない、便が細くなった、排便に出血や腹痛を伴う、家族に大腸ポリープや大腸がんの人がいるといった場合は、大腸がんなどの大腸疾患の可能性もあります。

 

こうした症状が見られたら、市販薬を使用する前に、医療機関を受診することが重要です。また大腸がん検診で便潜血反応が陽性の場合も、必ず受診しましょう。

監修者/野澤真木子先生(のざわ・まきこ)

医療法人社団桃仁日本橋レディースクリニック院長。杏林大学医学部卒業後、同大学医学部付属病院第一外科入局。松島病院大腸肛門病センター、松島ランドマーククリニック院長などを経て、現職に至る。医学博士。日本大腸肛門病学会指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医など。クリニックには食物繊維の豊富なメニューを提供する「フローラカフェ by NLC」を併設。