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口臭が気になり始めたらお口の老化のサイン。40代が知っておきたいオーラルケア情報

繊細で敏感な口の中は、体や心の不調が現れやすい場所です。口の乾きもサインの一つ。更年期世代になると特に、唾液の量や質が低下し、口腔内の環境も悪化しやすくなります。唾液の力を高めて、口の中に潤いを取り戻しましょう。

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Q:40代になってから口が乾きやすく、口臭が気になるのですが…。

 ドライマウス(口腔乾燥症)の患者数は、800万人ほどいると推定されており、“現代病”として注目されています。更年期を迎える頃から増えてくる疾患ですが、最近は慢性的なストレスを抱える若年層にもみられるようになってきました。

 

 主な症状としては、口の中が乾く、口の中がネバネバする、舌がヒリヒリするなどが挙げられます。また、舌の表面がひび割れ、溝のようなシワができている、舌の表面にある小さい突起(舌乳頭)が萎縮し、ツルツルしているなども、ドライマウスの人によく見られる症状です。

 

 ドライマウスは病気としての認識が低く、「ただ口が乾くだけ」と軽視されがちですが、放っておくと、虫歯や歯周病、口内炎などの口腔内疾患のリスクが高まったり、口臭がきつくなったりします。その他、「おいしさを感じなくなる」「食べ物を飲み込めなくなる(嚥下障害)」などの状態を引き起こし、生活の質(QOL)の低下にもつながります。

Q:なぜドライマウスになると口臭が起こるの?

 ドライマウスの直接的な原因は、唾液の分泌量の低下です。唾液には、抗菌作用や消化作用、食べかすや歯垢を洗い流す自浄作用などの重要な役割があります。唾液の量が低下するとこれらの働きも低下し、雑菌が口の中の汚れを餌にして繁殖。口臭のもとになる悪臭成分がたくさんつくられてしまうのです。

 

 唾液が十分に分泌されない主な要因としては、加齢による口周りの筋力低下や唾液を分泌する唾液腺の萎縮、あまりかまない食生活、喫煙、代謝障害(糖尿病や甲状腺疾患)、薬の副作用などが挙げられます。

 

 また、唾液の分泌は自律神経にコントロールされています。日常的にストレスを抱えていると交感神経が優位になり、唾液の分泌量が低下。口が乾きやすくなります。更年期世代の女性は、この自律神経の乱れに加え、潤いをコントロールする女性ホルモンの分泌量の減少が、唾液の量や質の低下につながっています。

Q:口臭の有無を自分で確かめることはできる?

 健康な人の舌はピンク色をしていますが、舌の表面が白っぽいと口臭が出やすくなります。この「舌苔」と呼ばれる白い汚れは、口の中のはがれた粘膜や細菌の死骸、食べかすなどが付着したものです。

 

 皮膚の角質が垢となってはがれるように、口の中の粘膜もターンオーバーを繰り返していて、そのスピードは皮膚より速いといわれています。

 

 口の中が唾液で潤っていると、はがれ落ちた粘膜など、舌の表面の汚れを洗い流してくれます。これに対してドライマウスの人は、唾液が少ないことで汚れが蓄積しやすくなるため、痛みがなければ舌磨きをするのも一案です。繊細な舌の粘膜を傷つけないよう、舌磨き用の柔らかいブラシを使って行いましょう。

Q:ドライマウスはどこで治療するの?

 ドライマウスの症状が見られる場合は、歯科医院またはドライマウス専門外来を受診しましょう。糖尿病などの持病がある人は、治療を受けている先生に相談してください。

 

 ドライアイや更年期障害などの異なる症状を併発している場合は、歯科治療だけでなく、眼科や婦人科と連携した治療が必要です。更年期世代の女性は、ホルモン補充療法(HRT)を受けることでドライマウスの症状が緩和されることもあります。

 

 主な治療法としては、マウスウォッシュや保湿ジェルなどの口腔ケア用品を使って、乾きや痛みの症状を和らげる対症療法を行います。その他に、首に近赤外線を当てて自律神経を整え、唾液腺を活性化して唾液の分泌量を増やす治療法などもあります。症状を改善するには、日々のセルフケアも大切です。

Q:ドライマウスを防ぐにはどんなことに気をつければよい?

 ドライマウスを予防するには、唾液の分泌を促すことが大切です。日常生活では、次の4つのポイントを心がけましょう。

 

 まずは、よくかむこと。しっかりかむことで唾液の分泌量が増え、口周りの筋力の低下を防ぐことにもつながります。ガムをかむのも一案です。

 

 2つ目は、リラックスする時間をつくること。ストレスや緊張した状態が続くと交感神経が優位になり、唾液の分泌量が低下します。口臭予防効果のある飴をなめるなどして気分転換しましょう。

 

 3つ目は、生活のリズムを整えること。食事や睡眠時間が不規則になると、自律神経が乱れ、唾液の分泌を妨げます。

 

 4つ目は、口のマッサージなどをして、口を動かすこと。唾液腺を刺激したり、舌の先でマッサージしたりすると口周りの血行がよくなり、唾液の分泌が促されます。何かをし“ながら”できる口のマッサージやストレッチを取り入れてみるとよいでしょう。

監修者/志村真理子先生(しむら・まりこ)

志村デンタルクリニック副院長。1988年昭和大学歯学部卒業。同大学歯内療法学教室を経て、95年より現職。99年NTT東日本関東病院歯科口腔外科でも診察を開始し、ドライマウスやシェーグレン症候群の診療、看護・介護における口腔ケアの推進、がん治療を受けている患者の口腔ケアなどを担当。2003年同クリニックにドライマウス女性専門外来を開設。「女性医療ネットワーク」の理事・発起人・世話人、「性と健康を考える女性専門家の会」の女性口腔医学プロジェクトリーダーなどを務める。