「だるい」「気力がわかない」の原因は、自律神経の乱れ? 「ゆっくり」意識で解決

忙しい毎日に加え、春は不安定な天候や生活環境の変化などで緊張や不安、ストレスなどを抱えがちです。精神的に落ち着かない状態が続くと、自律神経の乱れや心身の不調につながります。心身を整えるために効果的なケアを、自律神経研究の第一人者である小林弘幸先生に聞きました。Q&A形式でお届けします。

《 SELF CARE 》「だるい」「気力がわかない」の原因は、自律神経の乱れ? 「ゆっくり」意識で解決

Q:最近、体がだるくて気力が湧きません。何かの病気でしょうか?

 自律神経は、内臓の働きや血管、呼吸などをコントロールしている神経で、交感神経と副交感神経の2つがあります。この両方が互いにバランスを取り合いながら、心身を調節しています。

 

 しかし、年齢を重ねると共に自律神経の働きは衰えてきます。近年の研究では、特に副交感神経の働きが低下してくることが分かってきました。これには、ストレスはもちろん、運動不足や性ホルモンの影響など、様々な要因が関係しています。副交感神経の働きが低下し、交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮したままで血流は悪化。このように、自律神経の乱れによる血流障害が、「だるい」、「気力が湧かない」といった“疲れ”を招くのです。

自律神経のバランスをセルフチェック!

Q:春は過ごしやすい季節なのに疲れやすいのはなぜ?

 不安定な天候になりがちな春は、転勤や転居など、環境が変わることも多い時期です。また、環境の変化に慣れてきた頃に大型連休があり、生活のリズムを崩してしまうことも少なくありません。

 

 このような気温・気圧の変動や環境の変化、生活のリズムを崩すことも自律神経を乱し、疲れを招くのです。連休明けにやる気が出ない、だるいなど、“五月病“を訴える人が増えるのも、こういった要因が関係しています。

 

 休日であっても起床・就寝時間や食事の回数を変えないようにするなど、生活のリズムを崩さないようにすると自律神経は整いやすく、五月病の予防にもなります。また新緑などの四季の自然に触れると心が落ち着き、乱れた自律神経を整えるのに効果的です。

Q:自律神経を乱さないためにはどうすればいい?

 40~50代は体力が落ちる上に、仕事や家事と忙しい毎日の中で、子どもの進学や親の介護など、精神的にも落ち着かないことが多い年代です。時間に追われて急ぐことや慌てること、心配や不安、ストレスなどで交感神経が優位な状態が続くと、自律神経のバランスが乱れます。

 

 副交感神経の働きが低下してくる40代以降、自律神経を整えるカギを握るのは副交感神経です。そのため、副交感神経の働きを高める習慣を身につけることが重要になります。ただ、生活習慣を大きく変える必要はありません。人と話をする時や食事をする時、仕事や家事の仕方、休みの日の過ごし方など、全てにおいて“ゆっくり”を意識するだけで副交感神経の働きは高まり、自律神経が整います。

Q:ささいなことでイライラ……。感情をコントロールするには、どうしたらいい?

 イライラやガミガミなど、怒ると交感神経が急激に高まり、自律神経は一気に乱れます。呼吸が浅くなり、血管が収縮して血流が悪化。思考力や判断力、集中力が著しく低下し、体にも心にもよくありません。

 

 感情の乱れに気づいた時はまず、黙って深呼吸することです。5秒間息を吸って、10秒間で吐く「1対2の呼吸」を取り入れてみましょう。2~3分間続けると、副交感神経の働きが高まって血流がよくなり、不思議と気持ちも落ち着いてきます。

 

 また、「はぁ~」と大きくため息をつくのも、乱れた自律神経を整えるのに有効です。しっかりと息を吐くことで、息を十分に吸うことができ、自然と深い呼吸に。すると、副交感神経の働きが高まってリラックスでき、感情や思考の安定につながります。言いたいことがある場合は、自律神経を整えてから相手に伝えるようにしましょう。

 

 副交感神経の働きが低下してくる40代からは、怒りをうまく回避し、笑顔を忘れないことです。たとえつくり笑いでも、口角を上げるだけで副交感神経の働きは高まります。

Q:毎日予定がぎっしり。でも、体も気持ちもついていきません

 体や心が疲れ切った状態では、仕事や家事の生産性も下がってしまいます。40~50代は体力的にも無理が利かなくなってくる世代なので、頑張り過ぎないことです。理想は1日30分、少なくとも週に1日は予定を入れない、“ブランク時間(日)”をつくりましょう。

 

 例えば、今日の午後5時から30分は予定を入れない、水曜日はブランク日と決め、自分のためだけに自由な時間を使うのです。ダラダラと過ごすのではなく、好きな音楽を聴く、お気に入りのカフェでお茶をするなどして過ごすとよいでしょう。

 

 心に余裕を取り戻せると自律神経が整い、また前向きに取り組もうという気持ちが湧いてきます。

Q:よいコンディションで1日を過ごすには?

 朝の“心の余裕”が、その日1日を決めるといってもよいくらい、朝の過ごし方は重要です。急いだり、慌てたりすると交感神経が急激に高まります。1日の始まりに自律神経のバランスを乱すと、その後、仕事のミスや人間関係を損ねる原因にもなりかねません。

 

 朝は副交感神経から交感神経へと、ゆっくり切り替えるのが理想です。そのため、慌ただしく朝を過ごしている人はいつもより30分早く起き、時間に余裕をもつことをおすすめします。朝寝坊した時でも、ゆっくり歯磨きをする、ゆっくり着替えるなど、何か一つでも動きに“ゆっくり”を取り入れるだけで自律神経の乱れを防げます。

監修者/小林弘幸先生(こばやし・ひろゆき)

順天堂大学医学部教授。1987年順天堂大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科(小児外科)を修了後、ロンドン大学付属英国王立小児病院外科などを経て、順天堂大学小児外科学講師・助教授を歴任し、現在に至る。日本体育協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者であり、多くのアスリートの指導にかかわっている。著書に『一流の人をつくる 整える習慣』『自律神経を整える「あきらめる」健康法』(KADOKAWA)、『自律神経が整う時間コントロール術』(小学館)など多数。