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第1話 自分の食べるものを自分の手でつくってみよう

東京に暮らしながら「自産自消」の暮らしは実現できるのか? 東京在住の会社員である筆者が、貸農園で野菜づくりに初挑戦。その取り組みへの思いや過程を綴る連載企画です。

1.5m×2mのミニファームで栽培中

1.5m×2mのミニファームで栽培中

貸農園で野菜を育ててみた!

間引菜の ひたし一皿 一人酒

 

ああ、こんな暮らしができたらいいなあと思ったのが昨年秋のこと。新聞の俳句欄に思わず目がとまり、間引菜への慈しみと丁寧な暮らしに静かな共感を覚えました。こうした暮らしに思いを馳せるようになったのは、同時期にベランダや貸農園で始めた野菜栽培のおかげだったかもしれません。以前の私なら間引菜って?ぐらいで終わっていたはずですから。

 

野菜を育て始めると、お天気のことが以前よりも気になり、毎朝ベランダに出て太陽の位置を確かめるのが習慣になりました。貸農園の野菜は自分で水やりをするので、雨がいつ降るのかが気になり、日照時間が短いと心配になります。貸農園で小松菜を間引く時期になると、「こんなに抜いてしまうのか」という驚きと、「これも全部食べられるんだ」という安心感で、冒頭の“間引菜”への思いにつながっていきます。

最初は間引くのが忍びなくて…

最初は間引くのが忍びなくて…

コロナが教えてくれた日本の食の課題

では、なぜ野菜の栽培を始めたのか、ちょっと振り返ってみます。昨春のコロナ禍、ロックダウンで世界のあらゆるものがとまってしまった時期がありました。人の流れも物も流れも。そうなると「食料が入ってこない」「食料危機がくるぞ!」という不安を煽る報道が流れる一方で、行き場を失った牛乳や野菜などを廃棄する映像を目にする機会が増えていきました。

 

日本の食料自給率が37%(カロリーベース/農林水産省平成30年)と低いことは頭にありましたが、東京都の食料自給率が「1%」という数字を知った時の驚き!「当たり前にあるものが、実はとても危ういもの」を心底実感する瞬間でした。それと同時に、食品ロスが年間612万トン(農林水産省及び環境省平成 29 年度)にも及び、しかもこの612万トンは、世界の食料援助量約390 万トンの なんと1.6 倍!足りない地域がある一方で、日本は廃棄三昧。このようにいつの間にか食についての様々なトピックスが目に入るようになり、何からやろう?何ならできる?を自問自答...。

 

そんな時、行き場のなくなった野菜を救うために、多数のプレーヤーが力を尽くしていることをSNSで知ります。そこで、農家さんから野菜セットを直接買ったり、レストランのシェフが大量の玉ねぎを存分に使ったキッシュを買ったり、この時ばかりはSNSのスピードと広がりを改めて実感。プラットフォームに生産者さんが次々とエントリーし、その声が買う側にも届くことも新鮮でした。

今年は夏野菜を収穫するぞ!

人がつくったものを買う以外に、さて何ができる?となり、ようやく自分で野菜をつくってみよう!に辿りつきます。秋植えにギリギリ間に合う八月の終わり、ベランダのプランターでじゃがいも栽培を始めました。超初心者ですので、「じゃがいもは強いからほっといても芽を出すよ」という栽培農家さんの言葉を頼りにいざ植え付け!ベランダの陽当たりが今ひとつだったことと、昨秋の日照時間が短かったせいかご覧の通りのミニじゃがいもを年末にちょっぴり収穫...。

ゴロゴロと小さなじゃがいも収穫

ゴロゴロと小さなじゃがいも収穫

自給自足なんて夢のまた夢だ~と思っていた時に、「自産自消のできる社会」の実現を目指し活動されている株式会社マイファーム(代表は西辻一真さん)の存在を知ります。「自産自消」=自分たちでつくり自分たちで食べてみる。このフレーズ、とてもしっくりきました。「つくって食べる」ということを都心にいながら実践し、そこから食のあらゆる課題と向き合って少しずつ生活を見直してみよう!2021年春、懲りずにじゃがいも栽培を始め、貸農園では夏野菜に挑戦します。野菜たちの生育とともに自分も少しだけ変わっていけるように、日々の暮らしを日々の食を見直していけたらと思います。

3月下旬に芽を出したじゃがいも

3月下旬に芽を出したじゃがいも

東京自産自消

文・藤本真穂

ベランダと貸農園で栽培中の野菜を通して“食”を考える会社員。脚本家・向田邦子さんの暮らしを愉しむ生き方が理想。