
あらゆるものが動き出す春。新型コロナウイルスの流行がいまだ収まらず、思うように行動できない日々が続きますが、気持ちだけは軽やかに。本の世界で「お出かけ」を楽しみましょう。

出会いと別れ、切なくも強い旅立ちの時
「旅」がテーマの連作短編集。様々に描かれる日常の転換点と人生における岐路……。各編の登場人物が重なり合い、それぞれの人生が紡がれることで、読者の世界も物語に内包されてゆく。ここではないどこかへ。一歩踏み出せば、新たな景色が開かれる。誰もが抱える苦悩と葛藤、そして、はかなくも揺るぎない希望を描いた作品。

遠くの声に耳を澄ませて
著/宮下奈都
新潮社 490円(税抜)
書を持って、町へ出よう
文人たちが綴った様々な土地の紀行文や随筆などと共に、実際にその場所を散歩してみようというエッセイ。何げない路地裏や街角に息づく、その土地ならではの息づかいが、過去の名文と相まって心に染みる。著者が紹介する「本と場所」に案内され、見知らぬ土地を歩いてみれば、これまでとは違った新しい自分に出会えるはず。

散歩本を散歩する
著/池内 紀
交通新聞社 1,300円(税抜)
文・瀬在有紀