女性の場合は特に、病気の早期発見・早期治療のためは、企業や自治体が行っている健康診断の検査項目だけでは十分とはいえず、個別検診もあわせて行うことが大切です。検診は今だけでなく、将来の自分への健康投資。女性が受けるべき検診項目について、対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座· 新宿理事長の対馬ルリ子先生に聞きました。

一般的な「健康診断」と女性向け「検診」の違い
企業や自治体が行う健康診断が健康かどうかを調べるものであるのに対し、女性向け検診は女性が注意すべき特定の病気の早期発見·早期治療を目的とするものです。健康診断で見逃されがちな病気をチェックするためにも大切な検診ですが、その受診率は3〜4割程度と低く、さらに新型コロナウイルスの影響で受診を控える人も増えています。
女性が受けておきたい検診メニュー
女性向けの検診メニューは婦人科だけでなく内科のものもあります。年齢に合わせて必要な検査項目が変わります。

※年代別に推奨される検査を「○」で示す。検査費用は医療機関により異なる。上記費用には保険診療の他、自由診療も含まれる。また、自治体により無料クーポンや負担軽減を受けられる場合がある。
婦人科の検査項目のうち、経腟超音波は「子宮筋腫」や「卵巣のう腫」を、マンモグラフィーや乳腺超音波は「乳がん」を調べる検査です。ホルモン検査では、女性ホルモンのバランスを調べます。
内科の検査項目では、次のようなことを調べます。
● 血算……貧血や免疫などを調べる
● 生化学……肝機能・腎機能・脂質・糖などを調べる
● 甲状腺機能……女性に多い甲状腺機能異常を調べる
● 抗核抗体……女性に多い膠原病の要因の有無を調べる
● リウマチ因子……関節リウマチの要因の有無を調べる
● 炎症反応……感染や組織炎症の有無を調べる
● 4種腫瘍マーカー……主ながん発見のスクリーニング検査(肝臓・膵臓・大腸・卵巣)
● 腹囲測定……メタボリック症候群の基本検査
● 骨密度……骨粗鬆症の検査
● ストレスチェック・更年期指数……うつ傾向、ストレス度合いと更年期指数を調べる
※対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 女性総合検診メニュー参照
年代別に見る、受けたい検査項目
◆ 20代
子宮や卵巣の病気にかかわる検査
性交渉がある場合は子宮頸がん検診を2年に1回受診。HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンを接種済み、またはHPV併用検診で陰性なら3~5年に1回でOK。20代は女性ホルモンの分泌量が多く子宮や卵巣にかかわる疾患のリスクが高いため、経腟超音波検査も受けましょう。いずれも痛みはありません。
◆ 30〜40代
乳がんやホルモン値の検査
乳がんのリスクが高まることからマンモグラフィーの受診を。乳房を挟むため人によっては痛みを感じますが、がんの特徴である微細石灰化も発見でき、早期治療につながります。女性ホルモン量が減少し始める年代でもあるため、血液採取によるホルモン値や、X線や超音波による骨密度の検査も始めましょう。
※乳房視触診について
医師が目と手で乳房に異常がないかチェックする検査ですが、がん死亡率を下げる根拠がないとされ、2016年には厚生労働省が乳がん検診の方法として推奨しないとし、海外でも行われていません。受診することで安心してしまうというデメリットもあるので、画像による検査の受診をおすすめします。
◆ 40〜60代
子宮体がんや生活習慣病の検査
生活習慣病やがんのリスクが高まるため、血液採取による脂質などの検査や腫瘍マーカーを受けましょう。40 代以降に増える子宮体がんの検査もぜひ。子宮内膜の細胞を採取する検査で、多少の痛みや出血を伴う場合もあります。先に経腟超音波検査を受け、内膜の厚みや不整をチェックしましょう。
年齢に合わせた検診を定期的に受けよう
女性ホルモンと関係が深い女性の体。女性ホルモンは年齢と共に変化するため、注意すべき病気も年齢によって変わります。月経がある間はホルモンバランスを乱さないように心がけ、婦人科系疾患の予防や早期発見に努めることが大切。更年期以降は生活習慣病やがんなどに注意が必要です。60代以上は運動や脳の機能低下などへの対策も不可欠になります。
図:女性ホルモンの変化と起こりやすい病気

検診はヘルスメンテナンスの一環として、基本は1年に1回、70代は半年に1回、80代以降は3カ月に1回を目安に受けるとよいでしょう。
検診をどこで受けるかですが、かかりつけ医のいる人は、必要な検査項目が受けられるかを確認しましょう。かかりつけ医が対応していない、またはかかりつけ医がいない人は、上記のような検診を行っている医療機関を口コミやネットで探し、検診を機にかかりつけ医になってもらうとよいでしょう。
監修/対馬ルリ子先生(つしま・るりこ)
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座· 新宿理事長。産婦人科医·医学博士。弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、東京都立墨東病院総合周産期センター産婦人科医長などを経て現職。女性のための総合医療を実現するために、情報提供、啓発活動、政策提言などを行っている。日本女性財団代表理事。
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿HP https://w-wellness.com/