

夏野菜の定番、トマト、ナス、キュウリ
立夏を過ぎると、夏の気配が日に日に濃くなり、目に入る新緑をとても眩しく感じます。立夏は、春分と夏至のちょうど中間にあたり、この日から立秋の前日までが夏にあたるそうです。俳句の世界では、春から夏へと季語が変わっていくため、その選択に迷う時期だと聞きました。満開の「藤」や池に泳ぐ「おたまじゃくし」を詠みたくても、いずれも春の季語のため使えないそうです。季節をほんの少し先取りする世界なのですね。
東京都のゴールデンウィークは、昨年に引き続き緊急事態宣言により旅行もショッピングもおあずけの中スタート。そんな連休の晴天の中、念願の夏野菜の植えつけです! 前回お伝えした春菊と水菜とルッコラは4月末にすべて収穫。その部分に改めて肥料を蒔いて、クワとシャベルで土の準備をします。事前に、夏野菜の苗をホームセンターに見に行きましたが、予想以上にたくさんの種類の苗が並んでいて、逆に迷ってしまうほどでした。

ケールの葉がどんどん大きくなっています
野菜づくりビギナーのバイブル!
何しろ3㎡のミニファームのそのまた半分のスペースなので、トマトとナスとキュウリをひと株ずつ植えました。それぞれ、「濃密トマト フラガール」「千両ナス」「シャキット(キュウリ)」という名前が付いています。トマトとナスは、夏に欠かせない食材であること、キュウリは、「これでもか!というほど、ものすごい量が採れますよ」という貸農園のスタッフの言葉につられてセレクトしました。

栽培ビギナーに、心強い1冊!
栽培ビギナーにとって、初めて育てる野菜には心配はつきものですが、そうした時に必ず立ち返る本が私にはあります。“ガーデニング研究家”で樹木医でもある、はたまさひろさんが書かれた「コップひとつからはじめる 自給自足の野菜づくり百科」(内外出版社)です。畑を借りることなど考えてもみなかった1年程前、“コップからはじめる”という気軽なフレーズに惹かれて手にとりました。はたさんご自身がマンションの10階でネギの水耕栽培を始めてから、プランター栽培、家庭菜園、やがて畑での自給自足の暮らしを実践するまでを、レッスン形式で実にわかりやすく解説してくれています。
後半部分の「おすすめの野菜30種類の育て方」は、やさしい言葉と豊富なイラストで構成され、ビギナーでも「あ、これならできるかな?」と思えてしまうから不思議です。コロナ禍の今、地方へ移住して自給自足をしようという人が増えていますが、はたさんは「都会や都市近郊のニュータウンで自給自足を開始する方が、実はスタートラインとしては敷居が低いです」と書いておられます。生活を大きく変えることなくスタートを切ることを推奨されている点も、私が大きく頷いたポイントです。「みんなの趣味の園芸」(NHK出版)に連載中の「はたまさひろさんの園芸日記」もおすすめです。

ミニトマトの育て方をわかりやすく解説
畑の野菜を食べて生じた小さな“変化”
4月はとにかく春菊と水菜とルッコラが豊富にあったおかげで、いつも以上に野菜を摂り続けていると、私自身にちょっとした変化が生じてきました。まず、「できるだけ野菜を捨てたくない」という思いから、野菜の端っこは極力ギリギリを切り、多少くたびれた野菜でもなんとか調理してお腹に収めるようになったことです。そして、調理のバリエーションを増やすためにレシピサイトや動画を頻繁にみるようにもなりました。おかげで煮たり、炒めたりとバリエーションが少し増えた気がします。
さらに、もう一つが「捨てる野菜を土に返したい」と切実に思うようになりました。少し前からコンポストを使って堆肥化することにトライしようと思いつつ、なかなか踏み切れずにいます。マンションのベランダで始めるには、虫のことや臭いのことがどうしても気がかりです。すでに実践している友人たちに学びつつ、ぜひ今年の目標の一つに掲げたいと思います。畑の野菜がもたらす小さな変化は、ちょっとした“大人の食育”みたいです。

じゃがいもの花が咲いていました
文・藤本真穂
ベランダと貸農園で栽培中の野菜を通して“食”を考える会社員。脚本家・向田邦子さんの暮らしを愉しむ生き方が理想。