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第4話 雨降りが続く東京。畑仕事が私のセラピー

東京に暮らしながら「自産自消」の暮らしは実現できるのか? 東京在住の会社員である筆者が、貸農園で野菜づくりに初挑戦。その取り組みへの思いや過程を綴る連載企画です。

夏野菜の成長は早い!2週間でこんなに! 手前からナス、トマト、キュウリ

夏野菜の成長は早い!2週間でこんなに!手前からナス、トマト、キュウリ

順調に成長するナス、トマト、キュウリ

平年より2週間ほど早い梅雨入りで、全国的に雨予報です。東京の梅雨入りもそろそろでしょうか。

 

5月初旬に梅雨入りした沖縄には、この時期を表す「スーマンボースー」という言葉があるそうです。なんだか不思議な響きですね。もともと沖縄には「梅雨」という言葉はなく、この時期が二十四節気の「小満」と「芒種」にあたるため、沖縄語の「スーマン(小満)」と「ボースー(芒種)」で「スーマンボースー」の呼び名がついたとか。

 

さて、連休に植えつけた夏野菜は、順調に育っています。苗を手にした時は、小さくて本当に育つのか心配でしたが、写真の通りナス、トマト、キュウリいずれもしっかり育っています。風よけのために支柱を立ててビニールで囲っていましたが、もう窮屈そうなので、支柱1本を残して風よけは外しました。

畑の「お隣さん」とケールと人参を交換

雨降りが続くと水やりの心配がないのはありがたい反面、畑に行けないので張り合いがありません。連休も遠出はできなくても、畑で土をいじっているだけで実によい気分転換になりましたから。

 

つい先日は、お隣のブロックの方が「トマトやキュウリの苗は支柱を立てないとダメかしら?」とお尋ねでしたので、「風をよけるのに、最初は立てた方がよいそうですよ」と貸農園のスタッフに言われたままをお伝えしました。お隣さんは、昨年の5月に畑を始めて、週に2回は野菜のお世話に来ているそうです。土をいじりながらのおしゃべりもまた楽しいものですね。

“ケールの森”と呼びたくなるほど、わしゃわしゃと育っています

“ケールの森”と呼びたくなるほど、わしゃわしゃと育っています

その日は3月に植えたケールをもりもり収穫したので、帰り際にお隣さんにほんの少しだけおすそ分け。すると、「じゃあ、人参少し持って行く?」とその場で数本の人参を引き抜いてくださいました。なんと物々交換の成立です。ふさふさの葉っぱがついた人参は、普段手にする機会がないので、またまたレシピを検索。お味噌汁、かきあげ、胡麻和えなど、様々な用途がありますね。最もお手軽なお味噌汁に加えて、早速いただきました。

「土に触れる」「野菜を育てる」でセルフケア

3月から細々と野菜を育て始めて、畑に来るのは心身のバランスに効果的!とつくづく感じていますが、最近は企業が畑を借りるケースも増えてきているようです。リモートワークが中心となり、顔を合わせる機会が減ったスタッフのコミュニケーションや健康の増進をはかるのが狙いです。また、体調を崩して休職していたスタッフが、職場復帰の準備をする際にも、畑の果たす役割は大きいと言います。

 

サポート付き貸し農園シェア畑は、全国100カ所以上で貸し農園・体験農園を運営していますが、これまでに100社以上の企業と契約をしているそうです。昨夏に私が見学に訪れたシェア畑は、隣接する保育園が一部の区画を借りて園児たちがさつまいもを育てていました。毎年秋になるといも掘り大会を開いて収穫を体験。子どもの頃に、自分の手で育てた野菜を収穫して食べるのは、自然の恵みを実感するとても貴重な機会だと思います。

じゃがいもの収穫は6月の末頃?

じゃがいもの収穫は6月の末頃?

「園芸療法」で五感をリフレッシュ

畑のもたらす効果をセラピーとして展開しているのが、1950年代以降に欧米で始まった「園芸療法」です。日本では1990年代のはじめ頃から、医療や福祉の分野で研究や実践が進められてきました。外に出て季節の移り変わりを肌で感じ、草取りや水やり、収穫などで体を動かすことが五感のリフレッシュに繋がり、心身にプラスの効果をもたらします。「園芸療法」の目的は、植物をうまく育てて収穫することではなく、植物を育てる体験を通して心身のケアを行うのが狙いです。近年では、広大な庭園と園芸療法プログラムを備えた高齢者施設も誕生しています。

 

土に触れ、収穫の歓びを体験すると、なんとなく気分がいいなぁ…楽しいな…と感じていましたが、「園芸療法」のようにメソッドとして様々な形で実装されていることを知ると、その効果をますます実感します。東京に暮らしていても、ちょっとしたシフトチェンジで、新たなセルフケアと出会えるチャンスがあるものですね。

ケールのスムジーを飲みたいので、ミキサーの購入を検討中

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東京自産自消

文・藤本真穂

ベランダと貸農園で栽培中の野菜を通して“食”を考える会社員。脚本家・向田邦子さんの暮らしを愉しむ生き方が理想。