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第5話 田植えは、ぬかるんだ土との格闘だ!

自粛生活が続く中、「外に出て太陽の光を浴びたい!」「体を動かしたい!(でも運動はイヤ)」という欲求を解消すべく2021年の春から参加した、有機・無農薬農業と養蜂を教えてくれる農教室。農業・養蜂で初めて触れる自然界の不思議、生きる知恵、そして新しい生き方の模索。セルフドクター編集室の横山が、自らの体や心で得た学びをシェアしていく連載企画です。

田植えは、ぬかるんだ土との格闘だ!

おいしそうな苗を食べちゃうのは誰?

種籾をまいて約1カ月。田んぼに肥料を入れて耕す代かきという作業を経て、いよいよ田植えである。

 

「うまく育っていない育苗箱があったらそれは私のせいかも」とドキドキだったが、どの育苗箱の苗も溢れんばかりに育っていた。背丈は20㎝を越えているだろうか。触れてみるとしっとりとして柔らかく、このままサラダにしてモシャモシャ食べられそうな感じ。害虫の他、鹿による食害もあるらしい。そりゃそうだ、おいしそうだもの。

 

さすがにこの辺りに鹿はいないが、コブハクチョウによる被害が年々深刻になっているという。渡り鳥かと思っていたが、手賀沼とその周辺に定住し、今や150~200羽ほどに増えているのだとか。ちょうど昨年の今頃、私も近くの公園で5羽のひなが育つのを見守った。前回も書いたが冬水田んぼにとって鳥は大切な存在で、兵庫県には冬にやってくるハクチョウとの共生をうたったお米もある。しかし、苗の被害だけでなくコブハクチョウが外来種であることでの生態系への影響も懸念されており、なかなか難しい問題のようだ。

 

ところで先日、田んぼの近くの畑でうさぎとおぼしき足跡を見かけた。調べたところ、あまり多くはないもののうさぎによる食害の例もある。うさぎは体が濡れることを好まないから田んぼに入ってくることはなさそうだが、どうなんだろう?

昨年生まれた5羽のひな。今では親と見分けがつかないほど成長した。

昨年生まれた5羽のひな。今では親と見分けがつかないほど成長した。

田んぼはカエル天国

田植えのために育苗箱を移動すると、その下からカエルが何匹も飛び出してきた。田んぼの中には悠々と泳ぐ姿が見られ、周囲はケロケロと大合唱。中には「ケェ…ケェ…」と個性的な鳴き声のカエルもいる。私にはアマガエル以外の種類は見分けられないが、少なくともウシガエルのような大型のカエルは見かけなかった。

 

以前ウシガエルが出てきた時は持ち帰った子どもがいたそうで、しかもその子がさばいて食べたというからすごい。ウシガエルはアメリカから食用目的で移入された特定外来生物。私も台湾で揚げた足の肉を食べたことがある。形はカエルの足そのままで、味や食感は鶏肉のよう。臭みもなくおいしかったが、自分でさばくのは……いや、どう考えても無理。

大勢の人が田んぼに入ったため逃げまどうアマガエル。驚かせてごめん。

大勢の人が田んぼに入ったため逃げまどうアマガエル。驚かせてごめん。

田んぼの中で悪戦苦闘

苗を植える前に、植える位置の目印となるロープを田んぼに張る。ここでは田植え機は使わず自分達で手植えするのだ。育苗箱から苗を外し、苗の持ち方、植え方を教えてもらう。

 

<苗の植え方>

①根が絡み合った苗のかたまりから、苗を2本取り分ける。

その際、葉の部分を持つとちぎれてしまうのでできるだけ根に近いところを持つ。

 

②2本を一緒に親指と人差し指と中指で持ったら、

田んぼの土の中、第一関節くらいの深さまで差し込む。

 

各々苗のかたまりを手に、空いているレーン(ボウリングではないけれどそう言いたくなる)に入る。いよいよ田植えの開始である。何が難しいって、まず等間隔に植えられない。自分の右に張られているロープの印に合わせて、右から左に等間隔で4株(1株につき苗は2本)を植えていくのだが、間隔はバラバラだわ、一番右の株と一番左の株でだいぶ位置がずれているわで、全く美しくない。当然、縦のラインもグニャグニャと迷走している。水の下の土が柔らかいので苗の腰が落ち着かず、水の中でフワフワしているのもよくないのだろう。隣のレーンを横目でうかがうと、キチンと整列していてとてもきれい。かなり焦る。

終わってみれば、みんな迷走していた。自分だけじゃなくてよかった。

終わってみれば、みんな迷走していた。自分だけじゃなくてよかった。

植えながら後ろに進んでいくのも一苦労だ。田んぼでは泥に足を取られるため、足をしっかりホールドする田んぼ用長靴をはく。無い場合は裸足。それでもぬかるんだ土から足を引っこ抜くのは大変である。だからといってしっかりと足を上げないでズルズルと進めば、足の後ろ側にどんどん土が溜まって重くなる。しかも自分の通った跡は土がくぼんでしまい、苗を差し込みにくい。足をできるだけ上げて移動しながら、足跡部分に土を寄せて植えていく。

 

苗の植え付けが済んだら、雑草の予防と肥料のための米ぬかをまいて作業は終了。手を見れば、爪と皮膚との境目が真っ黒だ。爪を切り、ネイルブラシも使い、ハンドソープで何度洗っても落ちず、ようやく通常の手に戻ったのは夜に入浴した後のこと。それだけ土の粒子が細かいということなのだな。

何度洗っても土がとれない。爪を切っておくべきだった…。

何度洗っても土がとれない。爪を切っておくべきだった…。

体を酷使する農作業

通常は手植えでなく田植え機を使うからここまで大変ではないと思うが、田植えを終えた後は、かなりの疲労困憊(しかもその後にトウモロコシ畑の草むしりもあった)。翌日は足腰を中心に全身筋肉痛。農業って本当に体力勝負だ。

 

担当レーンを終えるまでの1時間以上、時々腰を伸ばすことはあってもほぼ中腰のままで軽いスクワットの連続。加えて初夏を通り越したような蒸し暑い陽気、コロナ禍でのマスク着用。途中で体調を崩した人がいたのも、致し方ないキツさである。こまめな水分補給、近くに人がいない場所ではマスクを外してもOK、決して無理はしないことなどは指導役の先輩方からしつこいくらいアナウンスされていた。しかし、集中していとそんなことも忘れてしまう。暑くなるこれからの季節、もっともっと気をつけなければ。

【農教室一年生 今回の初耳ポイント】

●コブハクチョウによる食害が深刻化

●田んぼの土は爪に入るとなかなか落ちない

●田植えは足腰の鍛錬

農教室一年生

文・横山珠世/セルフドクター編集室