

春から初夏はいろんな種をまく
日本の暦には「一粒万倍日」という日がある。宝くじ売り場や暦などで目にしたことのある人も多いだろう。一粒万倍とは1粒の籾が育って万倍にも実る稲穂になるという意味。そのため、一粒万倍日はその日に行ったことが何倍にもなるとされ、何かを始めたり良い事をしたりするのに適した日だという。
種まきにも吉日と言われているが、種まきではそれよりも気候が優先される。これまで肥料づくりや田植え、養蜂について紹介してきたが、その一方で他の野菜の種まきや苗の植え付けもどんどん進められてきた。農教室、学ぶことが多いのである。今回は梅雨入り前に行われた種まきの一部を紹介する。
梅雨の前の種まき、あれこれ
●じゃがいも(3月下旬に種いも植え)
じゃがいもは1年生が最初に作業を行った記念すべき作物である。育てるのはメークインと北あかり。どちらもスーパーでお馴染みの品種だ。
半分に切った種いもの切り口に灰を塗り、畝を立てた畑に植えていく。灰は腐敗防止のためで、炭がない場合は乾燥させればOKだという。種いもが小さい場合は切らないで使う。
芽が伸びてきたら、1つの種いも当たり2、3本になるよう「芽かき」と呼ばれる芽の間引きを行う。芽の数が多いままだと、いもの数は多くなるが1つひとつが小さくなり、芽の数を少なくすると、いもの数は少ないが大きくなるのだとか。ただし、どちらでもできるいもの総量(重さ)は変わらないというから面白い。

切り口を下にするのも腐敗予防のため。いも同士の間には油粕などの肥料をまく。
●かぼちゃ(3月末に種まき)
1年生にかぼちゃの種とポット、土が配られた。宿題である。春先は寒いので家の中で芽が出るまで育て、あとは屋外に移してほどよく葉が出たところで提出。畑に植え替える。
育てたかぼちゃを持ち寄ってみると、葉っぱの大きな苗、背の高い苗、茎の太い苗など個性豊か。暖かな家の中で長く育てると背ばかりが伸びてしまうそうで、私の苗もどちらかというとそのヒョロヒョロタイプ。甘やかし過ぎたようだ。中でもひときわ大きくしっかりとした苗に育てた人に聞いてみたところ、配られた小さなポットではなく、大きなポットで育てたとのこと。なるほど環境って大事。

みんなの宿題提出。茎の長さや太さ、葉っぱの大きさに違いがある。
●ねぎ(4月上旬に種まき)
何よりも種が小さい! しかも黒い! 黒い手袋や土の上に置いてしまうと、あっという間に見失う。畑に掘った穴に2粒ずつ入れていくのだが、老眼でない私ですら「この穴にはまいたっけ?」状態。年配の先輩や同級生から「見えない」「どこにいった」という悲しげなつぶやきが聞こえてくるのは致し方ないだろう。

こんなに小さな種を2粒ずつまく。まず2粒つまむところから四苦八苦。
●トウモロコシ(4月下旬に種まき)
まくのはポップコーンの素のような、乾燥させたトウモロコシの粒。消毒のため派手なピンク色に染まっている。畑の穴に2粒ずつ入れていくが、ネギの種とは大きさも色も段違いに目立つのでまきやすい。
種をまいた後には、鳥除けとして細いロープを畑の上に張り巡らせる。トウモロコシの種は鳥の大好物で、まいた側から掘り起こして食べてしまうのだとか。確かに、トウモロコシは鳥のエサとして売られているしなぁ。

鳥除けのロープ。細くて見えにくいので人間にとっても危険なのでは?
●落花生(5月下旬の種まき)
農教室の在校生は3つのチームに分けられているのだが、落花生はチーム戦と題し、収穫量を競わせるという。より楽しく向上心をもって学べるように、カリキュラムをいろいろと工夫していただけるのはありがたい。
種の見た目は薄皮のついたピーナッツそのまんま。土の中で育つものなのでまずは畝を高くしていく。初めて鍬を持って挑戦したが、スコップとは違うのですくった土をボロボロと落としてしまう。上手な人の様子から、畝の脇の土を掘ったら鍬を持ち上げるのではなく傾けるようにして盛っていくと学び、だんだん余計な力を使わずに早くできるようになった。できるようになると楽しい。モチベーションアップには成功体験が大事と実感する。

畝の片側だけだが30メートル以上やり遂げた。頑張ったな自分。
この他にも、農教室では既に枝豆、サトイモ、生姜、スイカ、サツマイモも種まきや苗の植えつけを行った。じゃがいもは、「東京自産自消」と同様に梅雨前に収穫したが、その他の野菜については夏から秋にかけて収穫が待っている。種一粒から万倍といえるくらい大きな収穫が得られるか、楽しみである。
【農教室一年生 今回の初耳ポイント】
●じゃがいもの芽を間引いても収穫できる重さは変わらない
●大きく強く育てるなら大きな環境で
●ねぎの種は見えない
文・横山珠世/セルフドクター編集室