尿もれ、性交痛、セックスレスなどの女性の下半身の悩みは人には相談しにくいし、かといって病院へ行くのは尻込みしてしまう。そもそも何科に行けばいいのかも悩んでしまいますね。でも、こうした悩みは、免疫力やQOL(生活の質)を下げたり、心の不調につながったりして、女性の生きるエネルギーを奪いかねません。そうした女性のデリケートな悩みの解決法として提案したい「腟ケア」。産前産後ケアの専門家であり、その経験から腟ケアの必要性を訴えている助産師のたつのゆりこ先生にお聞きしました。前編に引き続き、後編は「腟ケア」の実践編をお伝えします。

オイルケアで細胞から若返る
額にオイルをゆっくりと垂らす「シロダーラ」という施術を目にしたことはありませんか? あれがまさにアーユルヴェーダの世界。5000年の歴史があるアーユルヴェーダでは、オイルを目や鼻、口、肛門などに入れる治療法や、全身にオイルを塗って温める治療法が今も日常的に行われています。このようにアーユルヴェーダでオイルを多用するのは、若返りに効くという考えから。
「日本ではオイルはベトベトするといって嫌がる人も多いのですが、オイルを塗ると細胞が柔らかくなり、血流がよくなって老廃物も流れやすくなります。皮膚がふっくらし、つやも出る。アンチエイジングにはオイルケアがおすすめなんです」とたつの先生。最近では陰部の黒ずみを気にする女性も増えているようですが、オイルケアを続けていると、黒ずみも取れてしまうそうです。
「オイルケアが目指すのは、腟をうるおわせ、粘液を分泌しやすくすること。腟の働きをよくして中からうるおわせることであり、外から保湿するのが目的ではありません」。
粘液には、体内に侵入しようとする細菌を防ぐ役割や、体内に入った異物を排出する役割があり、粘液がしっかり分泌されていれば、免疫力が高くなるといえます。また、腟まわりがうるおうと、関係する子宮の働きもよくなります。
腟まわりを触ることに抵抗を感じる人は、段階を追って進めてみてください。最終的には毎日歯磨きをするように、腟ケアを習慣にしていきましょう。
どんなオイルを使ったらよいか

アーユルヴェーダで主に使われているのはセサミオイル(ごま油)です。オイルケアには、精油専門店などで購入できる肌用セサミオイルを使うか、食用のごま油(※)を使う際はキュアリングを必ず行ってください。セサミオイルの他、値段も手頃でおすすめなのが肌用のスイートアーモンドオイル。また、少し高価になりますが、ホホバオイルなど他にも適したオイルがあります。酸化していないオーガニックオイルを使うことも大切です。
※オイルケアで使うのは、生のごまを搾った透明や薄い黄色のごま油。炒りごまを搾った茶色のごま油は使えない。
<キュアリングの方法>
食用油をステンレスボールなどに入れ、湯せんする。100 ℃ に達したら火を止める。冷めてから保存容器に入れ、光の当たらない場所で保存する。
腟のオイルケア【実践編】
オイルケアは、毎日続けると早ければ1週間で体が変わります。毎日が難しければ週1〜2回を目標に。1カ月続ければ変化が実感できるはずです。無理をせず、痛いと思ったらやり方を工夫したり、時間をおいたりすることを基本に、ゆっくりと進めていきましょう。
入浴後に体をしっかり拭き、体が冷えないようにバスローブやバスタオルを羽織り、そのままお風呂場で行うか一人になれる部屋で行いましょう。照明を落として、気持ちをリラックスさせることが大切です。
STEP1:腟まわりに触れる
利き手の人差し指、中指にオイルをたっぷりつけます。それらの指を大陰唇に当て、優しくなでるようにオイルを塗ります。同様に小陰唇や腟口、会陰にも行いましょう。オイルは肌がしっとりする程度に、うっすらと塗ればOK。腟まわりにオイルを塗ったり、オイル湿布を貼ったりするだけでも、腟は温まり、うるおいを取り戻します。
STEP2:腟に指を入れる
利き手の人差し指にオイルをたっぷりつけ、第1関節までゆっくりと腟の中に入れていきます。無理なくできるようになったら、今度は指を2本に増やす、第2関節まで深く入れるなど無理のない範囲でステップアップを。いきなり深く入れずに、はじめは人差し指の第1関節を目安に。慣れたら第2関節まで入れてみましょう。
<子宮下垂をセルフチェック>
女性に増えている子宮下垂。腟の長さは7cmほどなので、仮に下垂していると、指を入れた途中で子宮に触れることになる。コリっとしたものに当たったら、それが子宮。第1関節で触れてしまうと、かなり下垂が進んでいる。
STEP3:腟内マッサージ
利き手の人差し指にオイルをたっぷりつけ、ゆっくりと第2関節まで腟の中に入れる。指を上下左右に動かし、優しくもみほぐす。今度は親指にオイルをたっぷりつけ、親指の腹を下に向け、第1関節までをゆっくりと腟の中に入れる。指を上下左右に動かし、優しくもみほぐす。
腟ケアは慣れるととても気持ちがいいものです。頭でものを考えることの多い現代人ですが、体が喜ぶこと、気持ちいいと感じることを行うことで、次第に自分の中の感情やエネルギーがコントロールできるようになります。不調も消え、自然と自分に自信がもてるようになるでしょう。
!!! オイルケアを行う際の注意点 !!!
●妊娠している人は、助産師や医師などの専門家と相談の上、行ってください。
●妊娠を希望している人は、排卵日前後にはオイルの使用を避けましょう。
●経開始からの3日間、体調が思わしくない時や食後すぐに行うのは避けてください。
●女性器を傷つけないために爪は切り、清潔な手で行いましょう。
●オイルにアレルギー反応が出ないかどうか、腕の内側につけてパッチテストを行ってください。
●石油由来のグリセリンやベビーオイルは絶対に使用しないでください。
監修/たつのゆりこ先生
1960年生まれ。大学病院(産科・新生児・ICU/CCU)から助産院、自宅出産介助まで幅広い業務経験をもち、東洋医学、アーユルヴェーダの知識を活かして活躍。現在、「Be born 助産院・産後養生院」院長として、お産の介助、出産前後や更年期女性の心身のケアを行っているだけでなく、「伝統医学応用研究所」を立ち上げ、女性の心と体についての勉強会なども開催している。