

「ハチミツ」だけではないミツバチの生成物
この時期、せっせと花の蜜や花粉を集めているミツバチ。その巣の中で作られるハチミツを、秋にはごっそりと奪ってしまうのだから人間は欲深く罪作りな生き物だ。そして、ミツバチからありがたくいただくものはハチミツだけではない。今回は、ハチミツやその他ミツバチが作るものについて調べてみた。
甘くておいしい! お馴染みの「ハチミツ」
働きバチは、花の蜜を体に貯めて巣まで持ち帰ってくる。巣に集められた花の蜜は、ミツバチの体内にある酵素の働きでブドウ糖と果糖に分解され、ハチの羽ばたきと巣の中の高い温度によって濃縮・熟成される。これが、働きバチや雄バチのエサとなる「ハチミツ」だ。
ハチミツの成分は主に糖質(炭水化物)。ミネラルなども含まれるが、その量は花の種類によって異なるという。
セイヨウミツバチは特定の花から蜜を集めることが多く、ニホンミツバチはいろいろな花からを集めるという違いがある。また、セイヨウミツバチの方がニホンミツバチよりたくさんの蜜が採取でき、養蜂には向いているのだとか。農教室で育てているのはニホンミツバチ。大切に、感謝していただきたい。

このハチミツで「ミード」というお酒も作れる。作ってみたいが酒税法の壁が……。
栄養たっぷりの「花粉」も健康食品
ミツバチとその幼虫のエサ、さらにローヤルゼリーの原料にもなるのが「花粉」である。ハチミツが糖質(炭水化物)であるのに対し、花粉にはタンパク質やビタミン、ミネラルが豊富。ハチミツが主食なら、花粉はおかずというイメージか。
ミツバチは、花の蜜を吸っている間に体についた花粉に花の蜜で湿り気を加え、だんご状に丸めて後ろ足につけて巣に戻る。これが「花粉だんご」(そのまんまの名前!)。ミツバチたちは集められた花粉だんごにハチミツを塗って保管するという。この花粉だんごは人間にとっても健康食品で、「ビーポーレン」などと言う名前で販売されている。

左の2匹の足に花粉だんごがある。色が微妙に違うのは花の違い?
お肌にも革製品にも使える「ミツロウ」
「ミツロウ」とは、ミツバチが体内で作り分泌するワックスのこと。古くからろうそくの材料やろうけつ染めに使われてきた。本来はミツバチが巣を作るために使われる。
農教室でも、この春、1つの群が引っ越してしまったため、空き家となった巣箱から巣を外してハチミツを採り、残ったものを煮だしてミツロウを抽出した。キレイなミツロウに精製するためには、煮だして漉す作業を何度か繰り返し、余計なものを取り除く。
こうしてできたミツロウにひまわり油(これも農教室で育てたひまわりからとったもの)を加えてクリームも作った。匂いはなく保湿力があるため、肌や唇に、さらには革製品や床のワックスとしても使えるという。

煮だして漉したミツロウはスープのよう。ただし、この状態ではにおいが強烈。

精製してひまわり油を加えたミツロウクリーム。
女王バチの栄養源! 「ローヤルゼリー」
「ローヤルゼリー」は、働きバチが食べた花粉やハチミツを体内で合成し分泌したもので、作れるのは育児を担当する若い働きバチのみ。私がミツバチだったとしたらもう作れないとういことか。女王バチと女王バチ候補の幼虫だけの食糧になり、女王バチは終生ローヤルゼリーだけを食べる。
糖質やタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルを含むバランス栄養食で、女王バチが女王バチとなるのは、このローヤルゼリーがあるから。寿命も体の大きさも働きバチとはけた違いに育つなんて、どれだけ栄養価が高いんだ!?と思う。
もちろん人間がそこに目をつけないわけはなく、滋養強壮剤や健康食品に、化粧品にも使われている。
「プロポリス」は巣を守る建材
「プロポリス」はミツバチが集めた木の樹液や樹脂、花粉、ミツロウなどから作られたもので、巣の枠や隙間を充填したり、巣の入り口に塗られたりしている。プロポリスが採取できるのはセイヨウミツバチのみだ。
抗菌作用や抗酸化作用があり、巣をウイルスや菌から守っている。人間への健康効果についても研究が進んでおり、巣の建材であるにもかかわらず、これまた健康食品としても注目されている。
今話題の昆虫食!「ハチノコ」
長野県や岐阜県などの郷土料理として食べられている「ハチノコ」は、ミツバチを含むいろいろなハチの幼虫やサナギを指すが、長野では主にクロスズメバチの幼虫。見た目にちょっと引いてしまうが、食べた人は美味しいと言う。近年話題の昆虫食だし、チャレンジしてみる価値はありそうだ。
タンパク源として知られるが、炭水化物やビタミン、ミネラル、必須アミノ酸も含まれていて栄養抜群。そのせいかハチノコを食べる習慣は日本だけでなく、ヨーロッパや南米など世界中にあるという。
【農教室一年生 今回の初耳ポイント】
●ローヤルゼリーを作るにも年齢制限があるなんて……
●巣の建材ですら人間は健康食品として活用する
●世界中で食べられているハチノコ
文・横山珠世/セルフドクター編集室