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夏バテや肌老化を防ぐには「黄色い食材」を 薬膳的な食材選びのポイント

高温多湿の夏は、まだ始まったばかり。心も体も元気に夏を過ごすため、薬膳の知恵を活用してみてはいかがでしょうか。薬膳というと、何か特別な物を食べなければいけないと思われがちですが、そんなことはなく、薬膳の食材は、私たちの身近にあふれています。夏バテや、紫外線による肌老化の予防に薬膳の力を! 今回は国際薬膳調理師の清水朝子先生に、薬膳的インナーケアのポイントをお聞きしました。

夏バテや肌老化を防ぐには「黄色い食材」を 薬膳的な食材選びのポイント

薬膳は全然難しいものではない

薬膳というと、薬のような物を使った食事のメニューと思っていませんか? 薬膳では全ての食材が「生薬」であり、その性質・効能を見極めながら季節や体調に合った食事を作ることを基本としています。つまり、私たちがスーパーで買う食材も生薬で、その効能を把握して使えば立派な薬膳になるのです。コンビニのおにぎりを選ぶ時に、「今日はたくさん汗をかいたから具は梅干しにしよう」「貧血気味だからサケにしよう」というのも薬膳。こう聞くと薬膳がぐんと身近なものになりませんか?

 

薬膳には「身土不二(しんどふじ)」という言葉があり、私たちの体は自然と一体だからこそ、自分が生活している土地で作られた作物を食べることが体にとって一番よいと伝えています。例えば東京に住んでいる人は、海外から輸入した野菜より、身近な関東圏で育った野菜を食べるとよいのです。この身土不二の考え方は食材を選ぶ大事なポイントになります。

夏は黄色い食材で「脾(ひ)」を守ろう

どんなオイルを使ったらよいか

五行表をご覧になったことはありますか? 薬膳のベースになっている東洋医学では、自然界の全てのものは「木・火・土・金・水」の5つの要素に分けられ、お互いに助けたり(相生/そうせい)、抑制したり(相克/そうこく)しながらバランスをとっていると考えられています。表を見ると分かるように、季節や体の機能(五臓)、食材などがこの表の中に当てはめられていますね。この表1つで、その季節に、体のどこに気をつけ、何を食べたらよいのかなど、多くの情報が得られます。

 

では、夏にはどんなことに気をつけたらよいのか、五行表を見ながら学んでいきましょう。日本の夏は湿度が高いため、五季では「長夏(ちょうか)」にあたります。長夏のある黄色い部分にあるのが、その季節に関わる臓器や食材など。見ていただくと、五臓のところで「脾」という言葉が出てきますね。ちなみに、東洋医学の「五臓」とは、西洋医学の考える臓器とは必ずしも一致しないもので、脾は西洋医学でいうところの胃腸機能に当たります。食べ物を消化・吸収し、体全体にエネルギーを送るのが脾の役割で、五臓の中で最も重要といっても過言ではありません。この脾が弱ってしまうのが、湿気の多い夏。そして脾が弱ると、肌にも悪影響を及ぼします。

 

脾を弱らせないためにはどうしたらよいか、それも五行表に記されています。分かりやすいのは、色。五色には「黄」とあることから、黄色い食材がおすすめとなります。夏に旬を迎えるとうもろこしやかぼちゃ、黄色いパプリカなどがぴったりです。また、五味(ごみ)には「甘」とあるので、甘みのある物もおすすめ。ここでいう甘みは、砂糖ではなく自然の甘さです。さつまいもやかぼちゃなどの甘みを摂るとよいですよ。脾を弱らせないためにも、冷たい物の摂り過ぎやお腹を冷やすことは避けましょう。

肌にとって大事な「気(き)」と「血(けつ)」

気血水

もう1つ、東洋医学の大事な考え方を覚えておくとよいでしょう。「気・血・水(すい)」というものなのですが、この3つは東洋医学の考える、生命活動に必要な基本物質を表しています。気・血・水が体内に十分あり、スムーズに巡っているのが「健康」な状態と考えられています。

 

このうち、「気」と「血」をつくっているのが、実は脾です。つまり、脾が弱ると、気や血が不足して体内を巡らなくなり、不健康な状態に陥ってしまうのです。

 

気や血はそれぞれ肌の健康にもかかわっています。気には毛穴を引き締めたり、汗の調節を行ったりする働きがあり、気が不足すると毛穴の開きやシワ、たるみにつながり、ハリ(弾力)のない肌になってしまいます。

 

血は文字通り血液を指します。肌が潤うためには血液が全身をしっかり巡っていることが大切で、不足すると、水量が少ない川のように、流れが滞ってしまいます。血液は酸素や栄養素を全身に運んでいますから、血液が足りない、巡らないとなると肌は栄養不足になり、肌の潤いやツヤがなくなる他、くすみ、目の下のクマ、シミやソバカスにもつながります。髪の毛の潤いもなくなってしまいます。

 

紫外線などで肌への負担が大きくなる夏は、食事の工夫で脾をいたわり、気と血をしっかり巡らせることが大切です。脾のケアは、肌の老化予防にもつながる大事なインナーケアになりますよ。

監修/清水朝子先生

国際薬膳調理師。忙しく働いていた20代後半に体を壊したのを機に、以前から興味のあった東洋医学の世界にはまり、国際薬膳調理師の資格を取るまでに。西洋医学では病名のつかなかった不調も今ではすっかり完治。普段は、漢方食材「なつめ」の専門会社で働きながら(なつめブランド「なつめいいろ」)、資格を活かし、薬膳セミナーなどを開催している。