

トップアスリートも訴える農作業の厳しさ
先日、「アルソア クイーンシルバー」という黒い石鹸などでお馴染みのアルソア慧央グループが、創立50周年を記念して「アルソア ドリーム プロジェクト」をスタートさせた。このプロジェクトは自然と調和したサステナブルなライフスタイルの実現を目指すもので、自給自足生活を夢見る浅田真央さんが参加する。八ヶ岳南麓に浅田さんが思い描く夢の畑を作り、生態系を利用した安心安全な作物を作る農法を学んでいくという。その様子はアルソア公式YouTubeチャンネルで公開されていくというので楽しみだ。
プロジェクトの発表記者会見には浅田さんも登場し、コンポスターで堆肥を作るデモンストレーションを行ったり、自然や農業への思いを語ったりしたのだが、その中で「農トレ」という言葉を使ったのが印象的だった。「脳トレ」ではない、「農業トレーニング」だ。
畑仕事は無になれる時間であると話す一方、農業の肉体的な厳しさも語った浅田さん。使う筋肉が違うとはいえ、世界を極めたトップアスリートでも農業はキツイとは……。農業ではどのように体が鍛えられるのか。私のささやかな経験から考えてみたい。

堆肥を混ぜる浅田さん。この後100㎏近いコンポスターをグルグル回していたのはさすが!
倒れたら悲惨!「泥んこ体幹トレーニング」

春の田植えの様子。稲が育っていくと歩ける幅も狭まり、さらに歩きにくくなる。
当たり前だがこの時期の田んぼには水がたっぷりと入っている。つまり足元はドロドロ。畑だって雨上がりはドロドロになる。
とはいえ、田んぼも畑も生い茂る雑草をそのままにはできない。草のために入らざるを得ない時は脱げにくい田んぼ用の長靴を着用するのだが、田んぼ用だからといってスムーズに歩けるわけではない。
時には片足を軸に、もう片足を泥から引っこ抜かなければならないのだが、その軸となる足元も泥のため安定しないのである。周囲には掴むところも手をつくところもなく、グラつきながらも必死でバランスをとる。そう、これは体幹のトレーニングなのだ。
泥だらけになったら帰りが大変なので、「絶対に転べない戦い」がそこにある。
大殿筋とハムストリングを酷使!「植えてむしってスクワット」

6月に行ったひまわりの間引きと草むしり。腕の力だけでは抜けない。
作業中にお尻をつくことはない。なぜなら田んぼは水がはられているし、畑は畝を崩してしまうからだ。ついでにいうと、作業後にスコップや鍬を洗う時も水が跳ねるのでしゃがむのは難しい。
となると、前かがみの姿勢を続けることになる。しかも、苗を植えたり草をむしったりするには姿勢を低くしなければならず、膝の曲げ伸ばしも必要となる。膝がつま先より前に出ないようにすれば、そう、これはスクワット。足元が安定しない中では、前傾姿勢になりがちだけど、頑張ってみよう。
田植えや草むしりの翌日はお尻から太ももの裏側が筋肉痛になる。よかった、筋肉があって……。
背中と二の腕に効く!「グイっと持ち上げシェイプアップ」

スイカも豊作! 嬉しいけれどこれを運ぶのは大変!
農作業の道具や肥料、収穫した野菜は、当たり前だが自分たちで運ぶ。むしったり刈り取ったりした雑草や間引いた芽なども同様。一輪車に乗せることもあるし、手で抱えることもある。どれもこれも運びにくいし重い。
さらに、畑では鍬やスコップで土を掘りおこす。先輩方を見ていれば余計な力は不要だと分かるが、分かったところで同じようにはできない。結果、全力で土を掘り、持ち運ぶこととなる。
そう、これらはシェイプアップ。最近厚みを増した背中と、タルタルの二の腕に効くと信じて取り組もう。
漫画などで戦いの最中に握力が無くなったり腕が疲れたりして刀を取り落とすシーンが出てくるが、農教室に入って初めてその感覚を実感できた。刀じゃなくて鍬だったけど。
筋肉を鍛えることとアンチエイジング
このように「体幹トレーニング」「筋トレ」ができそうな農作業。ではそのメリットって?
調べてみると「体幹トレーニング」のメリットとしては、
・姿勢が整い、腰痛などを予防する。
・お腹がひきしまる。
・体のバランスがとりやすくなり、けがなどを防ぐ。
・筋肉がついて疲れにくくなる。
などがある。
同じく「筋トレ」のメリットは以下の通り。
・筋肉量が増えて基礎代謝が上がりやせやすくなる。
・血行がよくなり冷えやコリ、疲れが改善する。
・体を作る成長ホルモンの分泌が促される。
これってアンチエイジング、ウェルエイジングという点でかなり魅力的じゃないか。そうやってみると、先輩方は私よりかなり年長の皆さん元気で力持ち。農作業、すごいな。
【農教室一年生 今回の初耳ポイント】
●世界のトップアスリートも認める農業のキツさ
●筋肉痛で知る「こんなところにも筋肉が!」
●先輩方の若さの秘訣は農トレだ!
文・横山珠世/セルフドクター編集室