

いよいよ収穫へ
農教室に入学してすぐ、4月初めの畔づくりから稲作りは始まった。育てるのは、うるち米ともち米、そして黒米。春の予措、種まき、稲プールでの育苗、初夏の田んぼの代かきや施肥、田植え、そして夏の除草を経ていよいよ秋の収穫へ。その様子はこのコラムでも度々ご紹介してきたが、いよいよクライマックスということで夏と秋の様子をお伝えしようと思う。
夏はとにかく除草!除草!
田植えをした時、水の下のぬかるんだ土に苗を差し込みながら、ちゃんと根付いてくれるのかとても不安だった。しかし生命力の塊のような苗は素人の下手な植え方などお構いなしにしっかりと根を張り、どんどん育ってくれた。そんな愛しい稲を押しのけるように茂る物も現れる。そう、雑草である。「雑草という草は無い」という昭和天皇の言葉に全くその通りだとは思うのだが、ここでは雑草と言わせてもらう。
無農薬ということで(無農薬じゃなくても?)、とにかく畔も田んぼの中も雑草が元気いっぱいだ。畔は抜いたり刈ったりすればいいのだが、田んぼの中はどうするのか。もちろん入って除草するのである。稲と稲の間の細道にかがんで水の中の草を引っこ抜く、もしくは刈り取るなんて、転ぶか尻もちをつくかして泥まみれになる予感しかないが、ちゃんと道具が用意されていた。
それが「水田中耕除草機」という物。稲と稲の間くらいの幅のボディの先にはギザギザの金属の歯がついており、田んぼに入れて押して歩けばその歯が回転して草を刈り取ると共に田んぼの土も撹拌する。そうすることで根に栄養や酸素が届きやすくもなるという。

手押しタイプの水田中耕除草機。黄色いボディが愛くるしい。
稲が発育する初めの頃に使う物らしく、我々が使ったのも稲がそれほど大きくなっていない6月中旬。畔にいる先輩から「歯を深く入れない!」などの指導を受けながらチャレンジしてみたが、なかなか前に進まない。稲までカットしてるんじゃないかという不安を抱えながら何とか一往復。足元も安定せず、体力を奪われる。帰宅後、調べてみたところ、私たちが使っているタイプは2万円弱で購入が可能なようだ。でも、エンジン付きの楽チンそうな物は一桁違うなど、農業機材はかなり高い。大型のトラクターやコンバインなんて高級車並みだし、農業に新規参入する人はこれらをどう調達しているのだろう。レンタルもあるが、同じ作物を作っている農家同士で作業のタイミングが重なるので取り合いになりそう。
次の除草は7月の中旬。稲もお尻の高さくらいまで成長しているので前回使った除草機は難しそう。そう思ったら、稲と稲の間を歩いて雑草を踏むようにとの指示が出た。土に踏み込んでしまえば日も当たらず枯れてしまうので、十分除草になるのだとか。なるほど。
田んぼの中には白くて可愛らしい花も咲いていたが、この花の実が落ちるとまたそこから増えてしまうので抜くように言われる。オモダカと言う草らしい。後日、薬膳の先生から「田んぼならクログワイもあるかもよ」と教えていただいたが確認できず。クログワイは日本でお正月に食べるクワイとは別の物とのことで、中華料理の炒め物に入っている白くてシャクシャクした物がどうやらクログワイらしい。薬膳にも使われるようなので来年チェックしてみよう。

オモダカの花。ちなみに日本人に馴染みのあるクワイはオモダカ科。
白熱の「かかし祭」
草刈りから1か月後の8月下旬、毎年恒例だという「かかし祭」が開催された。農教室の各チームが作った物、お子さんのいるご家庭が参加する子ども部会が作った物、そして外部参加者が作った物、計20数体のかかしが田んぼの周りに並んだ。もちろん私も祭りの数週間前から始まるかかし作りから参加。賞品は収穫したお米ということで、材料集めの段階から先輩方の熱気がすごかった。我々のチームが作ったのは「キティちゃん」と「一休さん」。双子の赤ちゃんをだっこするパンダや大谷翔平選手など、各チーム工夫を凝らした物ばかりだ。
投票により農教室部門の1位に輝いたのは「ワクチン接種」、2位に我がチームの「キティちゃん」も入った。悔しいような嬉しいような。でも、こんな工作っぽいことをするのは何年ぶりだろう。子どもに戻ったみたいで楽しかったなぁ。

左端が1位になった「ワクチン接種」。サイズがリアルで夜見たら絶対怖い。

1カ月前は穂も見えなかった稲はあっという間に実り、刈ったはずの畔の雑草はあっという間に伸びる。
【農教室一年生 今回の初耳ポイント】
●便利な農業機材はメッチャ高い
●田んぼの中の雑草は踏むだけでも除草できる
●賞品がかかるとかかし作りも燃える!
文・横山珠世/セルフドクター編集室