

稲刈りは空模様を見ながら
稲刈りは9月11日に行われた。私たちの住む地域は、9月に入ってから晴れの日が少なく、空模様を見ながらのスケジュール調整に。とはいえ稲刈りにはタイミングも大切なので、途中雨がパラついたもののなんとか予定通り実行できてよかった。
田んぼというと常に水をはっているようにも思われるが、稲刈りの少し前から水を抜く。これを「落水」と呼ぶが、こうすることで稲の粒を充実させると同時に稲刈りをしやすくするという。しかし、連日の雨のため田んぼの中もぬかるんだ状態。コンバインやバインダーも使うが、ぬかるんで機械が入れない場所は人力である。本来ならば外部の人も参加して賑やかな稲刈りとなるところだが、コロナの影響もあり農教室と運営団体のメンバーでの作業となった。
皆、手にのこぎり鎌を持って田んぼに入る。のこぎり鎌はその名のとおりギザギザの刃の鎌で、稲を一株握り、根本に鎌を当てて手前に一気に引けば刈り取れる。とはいえ私は、力が無さすぎてうまくいかず、のこぎりを引くように使ってしまう。「そのやり方では疲れちゃうよ」なんて声もかけていただいたが、本当にその通りで、翌日は案の定の筋肉痛に。

稲とのこぎり鎌。刈り取った稲は両手でつかめるくらいの量にまとめて束ねる。
田んぼに入ると一歩進むごとに10匹以上のバッタが飛んで逃げる。足元ではコオロギやカエルも右往左往していて、申し訳ない気持ちだ。農教室には子ども部会があり、子どもたちの田んぼも同じ日に稲刈りを行ったのだが、カリキュラムに「虫取り」も含まれているようで、みんな虫かごや虫取り網を持参。バッタやトンボだけでなく大きなザリガニを捕まえている子どももいた。

アライグマも出没! 特定外来生物で、千葉県では年間2000万円以上の農作物被害が出ているという。
天日干しのお米は美味しい?
人力で刈った稲は麻紐でまとめる。紐を二つ折りにして稲の束の下に通し、輪になった部分に紐の先を2本とも通してギュっと引っ張り、そのうちの1本をグルリと回してもう1本と結べば上手に束ねられる。束ねた稲はうるち米、もち米、黒米が混ざらないように注意しながら、「はざ」にかけて天日干しをする。

束ねた稲は「はざ」に引っ掛けて天日干しに。それにしても天気が悪い。
ところで「はざ」がどんな物かご存知だろうか。「はざ」とは木や竹を組んで柱を作り、そこに横木を渡した物で、稲の束を二股に分けて横木に引っ掛けて干す。スチールやアルミの物もある。子どもの頃、地元(茨城県北部)の祖父の田んぼで稲刈りを手伝ったことがあるが、そこでは「はざ」ではなく「おだ」と呼んでいた。
「はざ」に掛けることで、稲に風が通って日も当たり、乾燥しやすくなる。東北地方などでは横木ではなくまっすぐに立てた棒に引っ掛けるスタイルもあるようだ。また、新潟県の南魚沼市ではスキー場のリフトに稲を掛けて干している。経費は気になるが、話題になってお米の付加価値にもなるだろう。

スキー場の多いこのエリアは、コシヒカリの名産地でもある。
今では手間のかかる天日干しではなく機械での乾燥が主流となっている。農業の担い手の減少や日本の気候の変動もあり、変わっていくのは致し方ないと思うのだが、天日干しの方が、米へのダメージが少なく美味しいと言われている。調べてみたところ、「日本調理科学会誌」に、味や硬さ、粘度などで機械乾燥と比較したところ天日干しの方が米本来の美味しさを損なわないという論文もあった。
稲刈りの後は脱穀!…だったのだが
稲刈りの翌週には、乾燥させた稲から籾を落とす「脱穀」に参加するはずだった。しかし、まさかの台風襲来で予定が早まり平日実施に。そのため残念ながら参加できなかった。
悔しいので脱穀の条件を調べてみた。脱穀する稲は、貯蔵性を考えて15%くらいの水分量が理想だという。「はざ」に掛けた我々のお米は脱穀前で16~18%だったようで少々水分は多めのよう。ただ、玄米ではなく籾で貯蔵するならこのくらいでも大丈夫なようだ。また、15%以下まで乾燥させてしまうと味が損なわれたり、割れてしまったりすることもあるらしい。
それにしても脱穀に参加できなかったのは残念。次の作業は、籾から籾殻を外す「籾摺り」だが、これまた日程が変更になり参加ができないことが判明。なんてこった。
【農教室一年生 今回の初耳ポイント】
●稲刈りで使った筋肉は前腕伸筋群と上腕三頭筋、そしてハムストリングス
●野良アライグマ、初めて見た!
●天日干しのお米はやっぱり美味しいんだ
文・横山珠世/セルフドクター編集室