

美味しい新米、いただきます!
乾燥させた稲穂から籾を落とす脱穀、籾から籾殻を外して玄米の状態にする籾摺りには、大変残念なことに参加できなかった。野菜は収穫日当日に欠席するともらえないというルールがあり、もしかしてお米ももらえないのでは……とドキドキしたが、無事精米後のお米をいただけた。

玄米、胚芽米、白米の違いはこのようなもの。
今回、農教室で育てたのはうるち米「粒すけ」、もち米「ふさのもち」、黒米である。
「粒すけ」は千葉県で2020年にデビューしたお米。千葉県のお米には2006年から一般栽培が始まった「ふさこがね」があるが、それ以来の期待のニューフェイスだ。大粒で程よい弾力と粘りがあるのが特徴。開発には13年かかったという。
「ふさのもち」も千葉県で育成された品種。2001年から生産されるようになった。粒が大きくのびがよいもち米で、倒れにくく病気に強いため栽培しやすいという。
黒米は「紫黒米」と呼ばれる物で、皮の外側にアントシアニン色素があるためこのような色になっている。アントシアニンとは、抗酸化作用があり目の疲れなどにも効果があるとされるポリフェノールの一種。初めて食べるが、研がずに軽く洗ってお米と一緒に炊くだけでいいと教えてもらった。

上が黒米、左下がもち米、右下がうるち米。粒の形も大きさも色も違う。
早速「粒すけ」を炊いてみたが、確かに粘り気があって美味しい。しかし、収穫したての新米が必ずしも古米より美味しいわけではないとの意見も耳にする。新米は水分が多いため、輝きや粘りがある一方で旨みが若干薄くなることや、水加減が難しくベチャベチャしてしまいがちなことが理由としてあげられている。とはいえ「収穫したて」「初物」はテンションが上がる。新米はやっぱり美味しいと私は思う。
群雄割拠のブランド米
「粒すけ」「ふさのもち」に限らず、近年はお米のブランド化が進んでいる。日本穀物検定協会による「令和2年度産米の食味ランキング」を見ると、特Aと呼ばれる最高ランクには長年ブランド米を牽引してきた新潟県の「魚沼産コシヒカリ」の他、北海道の「ななつぼし」、青森県の「青天の霹靂」から熊本県の「くまさんの力」、鹿児島県の「あきほなみ」まで全国各地の米がずらり。それぞれネーミングにもこだわりが感じられて面白い。
例えば、青森県の「青天の霹靂」は低温に負けず、ふっくらとして適度な粘りや光沢のある米を目指して作られ、2015年に栽培されるようになった品種。それに対して「あきほなみ」は、鹿児島県では稲が実る頃も気温が高く台風の被害も出やすいことから開発された2008年デビューの品種である。このように土地ごとの気候にあった品種が次々と誕生しており、この流れは続いていくだろう。
品種改良で誕生したブランド米とは少々意味合いが異なるが、これまでにご紹介してきたトキやコウノトリ、ハクチョウなどが暮らす豊かな自然で育った米や、リフトで天日干しした米なども、そのような点を安全や美味しさの付加価値として売り出している。
米離れの現状
農林水産省の調査によると、国民1人が1年間に消費する米の量は、1962年度をピークに以降60年近く一貫して減少傾向にある。今、私たちが食べている米の量はピーク時の118.3㎏の半分以下で、しかも人口が減少していることもあり、米の需要は毎年10万トンずつ減っているという。それに伴い米の販売価格は下落。主食用米の作付面積も減少し、飼料用米の作付面積が増えている状態だ。当然、米農家の数も少なくなっており、2015年の時点で100万戸を切ってしまっている。
コロナ禍で家庭での米の消費は増えたが、中食・外食を含めた全体的な消費量はやはり減少傾向にあるようだ。消費者としては美味しいお米が開発されていくのはうれしいことであり、米のブランド化などはこのような状況を打破するための一手にもなると思うが、消費量の回復や価格の上昇はなかなか難しいだろう。
国としてもただ手をこまねいているわけではなく、業務用・輸出用米の市場拡大の支援策や、交付金による農家の収入減少の緩和策などを打ち出している。私としては「お米がなければパンを食べればよいでしょう」とはならないし、初夏の田んぼを渡る風も秋の黄金色に輝く田んぼの風景も好きなので、せっせとごはんを食べて微力ながらも米の需要を支えていきたい。

石川県輪島市の白米千枚田。冬に行った時は美しくライトアップされていた。稲作が廃れるとこの風景も失われていく。
【農教室一年生 今回の初耳ポイント】
●黒米は研がずに炊ける
●「新米が古米よりも必ずしも美味しいわけではない」という意見もある
●米の需要が毎年10万トンずつ減っている!?
文・横山珠世/セルフドクター編集室