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第15話 秋の収穫、豊かな食卓

収穫画像

千葉の名産といえば落花生

落花生は、花がしぼむと花の根元からつるが伸び、そこから地中にさやができる。

落花生は、花がしぼむと花の根元からつるが伸び、そこから地中にさやができる。

思えば今年5月、鍬を握って人生で初めて畝を立てたのが落花生の畑だった。見た目は落花生そのままの種を1粒ずつまいた後、追肥などを行い10月上旬に収穫の時期を迎えた。

 

落花生といえば千葉、千葉といえば落花生。国内産落花生の約8割は千葉県で作られている。千葉県での落花生栽培は明治初期に始まり、名産地として知られる八街市周辺では大正時代に作付面積が拡大した。ただし、現在国内で流通している落花生のおよそ9割は外国産。日本の農業がまたしても心配になる。

 

農教室で植えたのは、「おおまさり」と「Qなっつ」。どちらも平成20年代にデビューした千葉県育成品種である。「おおまさり」は粒の大きさが一般的な品種の約2倍あり、収穫量が多く、実が柔らかい。一方「Qなっつ」は収穫量が多く、はっきりとした甘みとあっさりとした食べやすい味が特徴だ。不思議な名前だが、これまでのピーナッツを超える味(アルファベットでPの次はQ)という意味を込めて命名されたという。なるほど。

左が「おおまさり」、右が「Qなっつ」。そういえば収穫量のチーム対抗戦の結果は?

左が「おおまさり」、右が「Qなっつ」。そういえば収穫量のチーム対抗戦の結果は?

「おおまさり」は茹で豆、「Qなっつ」は煎り豆に向いているという。まずはどちらも洗って、「Qなっつ」はベランダで干し、「おおまさり」は塩を多めにして茹でてみた。そもそも落花生を家で調理するのは初めて。ふっくらと茹で上がった「おおまさり」は、そのまま食べるだけでなく、砕いて料理のトッピングにしたり、すって小松菜と和えたりして楽しんだ。「Qなっつ」はさやから外して炒めて塩を振り、そのままポリポリ。

 

茹でた落花生はビタミンEとナイアシンが豊富とのこと。また、落花生の渋皮にはポリフェノールの一種であるレスベラトロールが多いという。「Qなっつ」は渋皮ごと食べやすいのでぜひお試しを。

幼稚園以来のさつまいも掘り

さつまいもは5月の植え付けから10月の収穫までの間、草刈りや土寄せ(中耕・培土)を行ったくらいであまり手間はかからない。収穫適期は気温が10℃以下になる前で、青天が続いた後。この条件を満たす10月半ばにさつまいも掘りが行われた。作業しやすいように、先輩方が事前につるや雑草を処理してくれていた。甘やかされているなぁ、我々。

 

畝の両側から2人でスコップを差し込み、掘り起こした土の中からもう1人がつるを引っ張ってさつまいもを回収する。土の中から次々と姿を現すさつまいもは、想像以上にたくさんあってしかも1つひとつが大きい。さつまいもとつるから切り離す作業を担当したが、切っても切っても追いつかない。途中、かじられたような傷のあるさつまいもがいくつか見られたが、もぐら? でも、もぐらは肉食だったような……。

3人1チームでさつまいもを掘る様子。いもを傷つけないように少し遠くからスコップを入れる。

3人1チームでさつまいもを掘る様子。いもを傷つけないように少し遠くからスコップを入れる。

私が前回さつまいも掘りをしたのは、幼稚園児の頃。あまりに遠い過去だが、こんなに立派でたくさんとれた記憶はない。品種の違いなのか、土や育て方がいいのか。このさつまいもは、スーパーでもおなじみの紅あずま。調べたところ、命名登録は1984年で私が幼稚園の頃にはまだ生まれていない品種だった。主に関東地方で多く栽培されている物で、大きく育ちやすいという。

 

最終的に240㎡の畑からの収穫量は500㎏。比較ができないので何とも言えないが、豊作といっていいのではなかろうか。当日100人ほどの参加者があったので、1人あたり約5kgの持ち帰り。1~2カ月ほど熟成するとさらに甘味が増すので楽しみだ。

熟成するまで待ちきれず、同じく農教室で収穫したもち米と炊いておこわを作った。

<さつまいもの収穫レシピ>

●さつまいものおこわ

もち米…1合

さつまいも…150g

酒…大さじ2

しょうゆ…少々

ごま塩…少々

 

1.もち米は研いでざるに上げ30分ほどおく。

2.さつまいもは皮をむいてさいの目に切り、水に浸ける。

3.炊飯器に1と酒、しょうゆを入れておこわの目盛りまで水を加え、水を切ったさつまいもをのせて炊く。

4.茶碗に盛り、ごま塩をかける。

人参の葉っぱを畑でモグモグ

10~15㎝ほどに伸びた人参の葉っぱ。

さつまいも畑の隣ではレタスや人参も育ちつつある。人参はちょっと難しく、一度種をまいたものの発芽せず、もう一度まきなおした経緯がある。人参の難しさの1つに土の乾燥があり、「雨上がりにまけ」というほど人参の発芽には湿気が重要。そのため、気候によっては水やりが欠かせず、発芽まで平日でも来られる人たちが作業していた。

 

人参の種は驚くほど小さく、あまりにまきづらいので丸い粒に加工されたペレット種子もあるくらいだ。当然、1粒ずつまくのは至難の業で、生えてきた人参の葉をよく見ると密集している物も多い。そこでさつまいも掘りの合間に間引き作業を行った。ほっそりとしていてきれいな緑色の葉を抜くと、根はうっすらとオレンジ色に染まっている。捨てるのはもったいないなぁと思っていたら「葉っぱを食べてごらん、美味しいよ!」とすすめられた。生で? ここで? 私はピーターラビット? と思いつつ口にしたら、柔らかくてほんのりと苦味があり、本当に美味しい。火を通さずに食べられるのは若い葉っぱだからかもしれない。捨てずにしっかり持ち帰り、サラダや味噌汁の具にしていただいた。

人参の葉っぱのサラダ。ナンプラーと塩ゆでの落花生でエスニック風に。

人参の葉っぱのサラダ。ナンプラーと塩ゆでの落花生でエスニック風に。

<人参の葉っぱの収穫レシピ>

●人参の葉っぱのサラダ

間引き人参の葉(生)…10本

玉ねぎ…1/2個

ツナ…1/2缶

茹で落花生…適量

ナンプラー…大さじ1

オリーブ油…小さじ1

レモン汁…小さじ1

砂糖…少々

ニンニク…少々

チリペッパー…少々

 

1.人参の葉っぱはざく切り、玉ねぎは薄切りにする。

2.ナンプラー、オリーブ油、レモン汁、砂糖、ニンニク、チリペッパーを混ぜてドレッシングを作る。

3.1とツナ、2のドレッシングを和える。

4.刻んだ茹で落花生を散らす。

【農教室一年生 今回の初耳ポイント】

●国内の落花生、9割は輸入品

●さつまいもを傷つけたのは誰?

●人参の葉っぱは生でもイケる

農教室一年生

文・横山珠世/セルフドクター編集室