

秋になってミツバチの数が減ってきた?
毎週、農教室の前後にミツバチの巣箱の様子を観察しているのだが、気温低下と共にミツバチの活動が鈍くなっているのか、はたまた数が減っているのか、春や夏のようにブンブンと飛び回る様子があまり見られなくなってきた。巣箱の掃除の際に担当している巣箱の内部をスマホで撮影してみたところ、どうもミツバチの数が少ない。
夏を過ぎると、生まれてくるミツバチより死んでいくミツバチの方が多くなり数は減少傾向になるようだし、スズメバチやダニ、病気などの影響も考えられる。それにしても少な過ぎて、このまま無事に冬を越せるのか心配だ。

10月の巣箱の中の様子。本来なら巣板が見えないほどのミツバチがいていいはずだが……。
いよいよフレッシュなハチミツとご対面!

巣箱の上にはみ出した巣も外す。ここにもハチミツがあり、口に含むと甘い。
群の状態を心配しつつも、10月、いよいよハチミツの収穫「採蜜」を行うこととなった。重箱のように重ねた巣箱の中には、上から垂れ下がるような形で板状の巣(巣板)が何枚も作られている。それぞれの巣板は以下のような構造になっているため、ハチミツのある巣箱の最上段を外し、巣板の上部を切り取って採蜜を行う。もちろん、全て採ってしまうわけではなくミツバチのためにも残しておく。
・上部…ハチミツの貯蔵場所
・中部…花粉の貯蔵場所
・下部…幼虫や卵を育てる場所
巣板の切り口にはトロリとしたハチミツが見えていて、すでに美味しそう。巣板には多くのミツバチが取りついているが、羽や体にハチミツが付着すると飛べなくなって命にかかわるので、チリ吹きやブロアーと呼ばれる道具で慎重に退出を促す。追い出して蓄財を奪うわけだから、我々は強盗のようなもの。慌てふためくミツバチの姿に心が痛む。
ミツバチがいなくなったところで、ヘラや割りばしなどを使って巣箱から巣板を外す作業に取りかかる。中には乾燥してカリカリになっている巣板もあるが、それでもハチミツは採れるとのこと。外した巣板はまず桶に集めていく。

巣箱から巣板を外す作業。巣穴をふさぐミツロウやゴミなどもこのタイミングで取り除く。
巣板からハチミツをどうやって採るのか
次にオーガンジーの袋に巣板を入れる。ハチミツを漉すのには、ザルやさらしなども使われるが、粘度が高いハチミツだと目が詰まってしまったり時間がかかってしまったりするため、このような目の細かい布やナイロンメッシュがよいとのこと。他に専用の漉し布もあるようだ。
このままじっくり時間をかけてハチミツが落ちるのを待つのかな? と思っていたら、なんと小型の脱水機が登場した。オーガンジーの袋に入れた巣板を脱水機にかけると、排水用のホースからハチミツが出てくるという様子がなんともシュール。力技だが、砕けた巣板が混じることもなく効率的!

ハチミツが流れ出るホースに、愛媛県にあるという「みかんジュースが出てくる蛇口」を思い出す。
脱水機のホースから出てきた採れたて絞りたてのハチミツは、甘さの中に少し酸味のある味わい。フレッシュな味を体感できるのは生産者の特権だろう。そして、ハチミツまみれでネチョネチョになった脱水機を洗うという貴重な体験も生産者の特権だ……。
こうしてできたハチミツは後日、会員への配付と販売などのため小ビンに詰める。非加熱・無添加の状態なので、加工して販売されているハチミツよりは味や香りにクセがあるのかもしれないが、抗菌や殺菌の効果を発揮する酵素が含まれ、発酵も起こる。以前に収穫した物をいただいたことがあるが、しばらく置いていたらビンの中で泡立っていた。これこそが発酵の証。生きているパワーを感じる。
オーガンジーの袋の中に残った巣板は捨てるのではなく、煮てミツロウを採るのに使う。ハチミツは常温で保管でき、異物さえ入らなければ腐ることもないが、こちらは日持ちがしないので先輩方が早めに処理を行うそうだ。

今回採れた量は4~5ℓ。ミツバチが周囲を飛びまわっていて申し訳なさMAX……。
【農教室一年生 今回の初耳ポイント】
●ミツバチはハチミツが体につくと命にかかわる
●ミツバチの巣は用途別にエリア分けされている
●ハチミツを漉すのに便利な脱水機!
文・横山珠世/セルフドクター編集室