
疲れの基本的な対策は食事と睡眠ですが疲れの原因に応じたケアを行うとさらに効果的です。後編では、女性の疲れをタイプ分けし、その解決策を東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長の木村容子先生に教えていただきます。チェックリストにより、まずは自身の疲れの原因を把握しましょう。前編はこちら。
チェックリストを使って、自分の疲れのタイプを知ろう
当てはまる項目にチェックをつけてください。最も多くチェックがついたブロックが、あなたの疲れのタイプです。ただし、肉体的な疲れと加齢に伴う疲れの2つが当てはまるなど、複数当てはまるケースがほとんどです。チェックがついたタイプの対策はすすんで取り入れていきましょう。
<肉体的な疲れ>
□ カフェイン飲料が欠かせない
□ 夜更かしなど無理がきかない
□ 日中に眠気を感じる
□ 物事に集中できない
□ 夕食後に仮眠をとると数時間たっていることがある
<精神的な疲れ>
□ 一晩寝ても疲れがとれない
□ 朝起きるのがつらい
□ 肩甲骨付近がこっている
□ やる気が出ない
□ ため息が多くなった
<女性特有の疲れ>
□ 動悸や息切れをしやすい
□ 慢性的な肩こりや腰痛がある
□ シミができやすい
□ 口の周りの吹き出物が治りにくい
□ 不安や抑うつ感が起きやすい
<巡りの悪さによる疲れ>
□ 肩や首のこりがひどい
□ 手足が冷える
□ 肌が荒れやすい
□ むくみやすい
□ 雨の日や台風が近づくと体の調子が悪い
<加齢に伴う疲れ>
□ 根を詰めると腰が痛む
□ 皮膚にツヤや潤いがない
□ 寒い季節は外に出るのが苦手
□ 長く眠れない
□ 下着は重ねて着ないと寒くて仕方がない
<虚弱状態による疲れ>
□ かぜをひきやすく、治りにくい
□ 以前よりも食が細くなってきた
□ 下痢や便秘になりやすい
□ 咳せき込むことが多い
□ 日中、横になることが多くなった
「肉体的な疲れ」の対策とは

肉体的な疲れは、一般的によく見られる毎日の疲れ。過労や寝不足、食生活の乱れなどにより「気」や「血」が不足することで起こります。一晩しっかり眠って「気」をチャージすれば解消できる疲れですが、この疲れを放置すると慢性的な疲れとなり、虚弱状態に進む恐れがあります。
対策の基本は「気」を補う食事と睡眠です。食事では疲労回復効果があるビタミンB 群の他、タンパク質やカルシウムなどのミネラルも積極的に摂りましょう。よい睡眠をとるために、日頃から体内時計を整えておくことも大切です。就寝時間がまちまちでも、起床時間は一定にするのがよいとされています。
「精神的な疲れ」の対策とは

このタイプの疲れを漢方的に見ると、過剰なストレスにより、体の中に「邪気」がたまり、全身に「気」が巡っていない状態。気分が鬱々としたり、ムラがあったり、手足の冷えを感じたりするケースが見られます。邪気とは体の中の余分なもののことで、漢方ではたまった邪気は、汗や尿、便通、血行改善により体外に出していきます。そのため、運動や入浴で汗をかくのがおすすめです。
好きなことに没頭する、歌を歌う、非日常的な時間をもつことも邪気を取り除くことにつながります。また、精神的に疲れている時は肩甲骨付近がこっていたり、背中が張っていたりすることも多く、背中をほぐすのも有効です。
「女性特有の疲れ」の対策とは

特に月経前後の女性に起こりやすい疲れで、月経による出血で「血」が不足した「血虚」の状態。いわゆる貧血を原因とした疲れです。酸素が体の隅々まで行き届きにくく、細胞が栄養不足になることから、肌や髪、爪といった体のあらゆる部分でツヤや潤いが失われます。美容面でも避けたい疲れです。
この疲れに対する漢方のアプローチは、「血」を補う黒豆や黒ごま、黒米などの黒い食材、ナッツやドライフルーツなどを積極的に食べること。鉄分を多く含む赤身の肉や魚などを毎日心がけて摂ることも大切です。食事だけで改善するのが難しい場合は、鉄分配合のドリンク剤を活用するのも一案です。
「巡りの悪さによる疲れ」の対策とは

このタイプの疲れは、「血」と「水」の巡りが悪くなり起こるもので、運動不足の人やデスクワークの人、入浴習慣がない人に多く見られます。基本的な対策は、体を動かすこと。特にウォーキングやジョギングなどの脚を使う運動がおすすめです。〝第二の心臓〟ともいわれるふくらはぎがポンプ役として働き、脚から心臓に向かって血液を戻してくれるので、むくみの予防・改善、全身の血行もよくしてくれます。
また、「血」や「水」の巡りをよくするには、体を冷やさないことも大切です。運動で筋肉をつけることは、冷えにくい体づくりにとっても重要なことといえます。
「加齢に伴う疲れ」の対策とは

漢方の考え方では女性は体のピークを過ぎた35歳以降は、それ以前と比べると「気」が少なくなるため、疲れやすくなっていきます。「気」が少なくなると徐々に「血」も少なくなっていきます。新陳代謝が低下することで冷えやすくなり、冷えが疲れを助長するケースも見られます。
「気」は睡眠によって補われますが、眠るにもエネルギーが必要。加齢に伴い睡眠時間は短くなり、睡眠の質も悪くなります。昼寝などで効果的に「気」をチャージしましょう。日常生活で起こる様々な〝変化〟によっても「気」は消耗します。季節の変わり目や非日常的なイベントなどでは「気」をつかい過ぎないことも大切です。
「虚弱状態による疲れ」の対策とは

30代や40代の人が、疲れがとれないことを年齢のせいにするのは早過ぎます。年齢よりはむしろ、生活習慣により「気」をすり減らしてしまったことが原因。本来は虚弱体質ではないのに、「気」がすり減ることで〝虚弱体質のような状態〟に陥っているのです。虚弱状態による疲れを放置すると、疲れ過ぎて体が動かなくなったり、気力がなくなって年齢以上に老け込んだりしてしまうこともあります。
この疲れの症状は、食欲がなくなったり、下痢や便秘になったりするなど「消化器」に現れる人と、咳や鼻水、かぜをひきやすいなど「呼吸器」に現れる人がいます。消化器系に症状が現れる人には、アンズやキンカンのはちみつ漬けがおすすめです。体を温めるねぎやしょうがなども、日常的に摂りたい食材。消化器系に症状が現れる人には、胃腸に負担がかかるステーキやウナギより、消化がよくて精がつく山いも、ナツメ、タイなどがおすすめです。

監修/木村容子先生(きむら・ようこ)
東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長、教授。お茶の水女子大学卒業後、中央官庁入省。英国オックスフォード大学大学院留学中に漢方と出会い、帰国後退職して東海大学医学部に学士入学。2002年より東京女子医科大学附属東洋医学研究所に勤務。医学博士。日本内科学会認定医。日本東洋医学会理事、専門医、指導医。著書に『女40歳からの「不調」を感じたら読む本』(静山社文庫)、『太りやすく、痩せにくくなったら読む本』(だいわ文庫)、『ストレス不調を自分でスッキリ解消する本』(さくら舎)他。