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100均グッズでもできる大地震に強い部屋作り「防災の習慣化」の専門家の知恵は?

今年の3月16日に、福島県沖でマグニチュード7.4の地震が発生しました。2011年の東日本大震災が思い出されるような大規模な地震で、広範囲大規模なエリアで停電も起こり、災害対策を見直すきっかけになった人もいるのではないでしょうか。いつやってくるかわ分からない地震、あるいは空き巣などのトラブルには、日頃からの備えが大切です。今回は、家庭の防災・防犯対策について、危機管理教育研究所代表・危機管理アドバイザーの国崎信江先生にお聞きしました。

コツコツ取り組んで地震に強い部屋をつくる

「地震大国である日本はいつどこで大きな地震が起こってもおかしくありません。日頃から、いざという時に備えておくことが大切です」と、危機管理教育研究所の国崎信江先生は語ります。

 

防災対策といえば、まず思いつくのが非常食や水の備蓄でしょう。確かに地震後の生活を考えればそれも大切ですが、それよりも先にしなければならないのが激しい揺れから身を守ること。地震時は家具が倒れたり食器が割れて飛散したり、命にかかわる大けがをすることもあります。家具は壁に固定、窓ガラスには飛散防止フィルムを貼るなど住まいを安全な場所に変えていくことが欠かせません。

 

とはいえ、家中の対策をするとなるとまとまった時間が必要で、それなりの出費も覚悟しなければなりません。

「そこで私自身も実践しているのが、防災を習慣にしてしまうこと。家計の中に『防災費』という項目をつくって、3,000〜5,000円程度の、家計に無理のかからない範囲で毎月防災対策をしていくのです。今月はリビングの飾り棚、来月は食器棚の上の段と、少しずつ対策を考え、日々の買い物の中で防災に役立ちそうな物を手に取るようにしていくと、無理なく続けられ、次第に地震に強い部屋になっていくでしょう」。

 

本格的な防災グッズを買いそろえなくても、例えばタッチライトを非常用ライトとして備えつけるなど、100円ショップの商品にひと工夫加えるだけでも十分な対策ができ、「それを考えるのも楽しい」、と国崎先生は言います。

 

安全の備えとして、防犯対策にも取り組みましょう。

「防犯でまず大事なのは整理整頓です。手入れされていない庭や散らかった玄関先は、隙のある家だという印象を与えてしまいます。大掃除を機会に防犯と防災を意識した家づくりを始めてみてはいかがでしょう」。

国崎信江先生が伝授する、コツコツ取り組む安全対策

習慣1:整理整頓が基本

何はなくともまずは整理整頓。棚の上に物を置いたり、物を積み上げたままにしておいたりすると、地震時に落下してけがの原因になります。整理のついでに防災を意識した模様替えにも取り組んでみましょう。侵入者に隙を見せないよう、庭の手入れや外回りの掃除も忘れずに。

 

習慣2:食器は割れない物に換える

部屋からの避難時、棚から食器が落下して床に飛び散ると破片でけがをしかねません。そこで普段使いの食器は思い切って木材やメラミン、シリコンなど割れにくく柔らかい素材に換えてみてはいかがでしょうか。お客様用の大切な食器は木箱に入れておき、必要な時に取り出して使うようにすることで地震から守ることができます。

 

習慣3:すべり止めシートを活用する

棚や机の上にはなるべく物を置かないようにしたいところですが、 置く場合はすべり止めシートを敷きましょう。100円ショップでも手に入ります。テレビなど重い物は粘着ジェルマットを利用してしっかり固定しましょう。

 

習慣4:家具は固定、ガラスは飛散防止

ガラスの飛散防止フィルムは1枚3,000円前後。食器棚など手近なところから少しずつ貼っていきましょう。窓からの侵入を防ぐ防犯フィルムならガラスが割れにくくなる上、飛散防止も兼ねられます。本棚やたんすを倒れないよう固定する器具は1組5,000円前後。負担が大きければ複数月分の「防災費」をためて購入を。

 

習慣5:本は大胆に整理を

本棚を壁にしっかり固定していても、収納している本は地震時の揺れで雪崩のように落ちてきます。本はできるだけ処分して、どうしても残したい本は、腰より低い本棚の下のほうに収納して安全性を確保したいところ。処分するのが忍びないという人は、電子書籍化する手も。有償で書籍を電子化してくれるサービスもあるので、計画的に進めていきましょう。

ところで家は大丈夫?

どれだけ室内の対策をしても、建物が倒れてしまっては元も子もありません。家の安全性を確認する耐震診断はぜひ受けたいところ。診断の費用は15〜20万円ほど。診断の結果、耐震補強が必要となると、数百万円が必要となりますが、地震で家が倒壊すればその10倍もの出費を覚悟しなければなりません。その保険と考えれば納得のいく負担ではないでしょうか。

監修/国崎信江(くにさき・のぶえ)先生

危機管理教育研究所代表・危機管理アドバイザー。女性・母親の視点から、防災・防犯対策を提唱している。国や自治体の防災委員を務め、多くのメディアを通して精力的に情報発信を行っている。自らも日々、防災対策を実践。『知っておきたい防災新常識大事典』(洋泉社)他、著書多数。