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気分が落ち込んだときに食べるとよい果実は? 東洋医学に学ぶ、冬のおいしい養生法

年始の忙しさや、新型コロナウイルスの再拡大による生活環境の変化により、心身に疲れがたまっていませんか。今回は、漢方的なアプローチから、食べることを通して心身を癒やす方法をご紹介します。東洋医学にも詳しい、目黒西口クリニック院長の南雲久美子先生にお聞きしました。冷えや胃腸の不調を取り上げた前編 に続き、後編では、冬に起こりやすい気分の落ち込みや、肌の乾燥トラブルを解決する方法をご紹介します。

「気分の落ち込み」におすすめの食材&食べ方とは?

冬になると、気分が落ち込んだり、やる気が出なかったり、不眠・過眠になったりすることも。その大きな原因は日照時間にあります。冬は日照時間が短いため、太陽を浴びることでつくられる脳内物質、セロトニンの分泌量が少なくなります。このセロトニンは、〝幸せホルモン〟とも呼ばれ、精神の安定や幸福感に深く関係。不足すると、心が不安定になってしまいます。

 

対策としては、第一に朝日を浴びること。朝起きたらカーテンを開け、太陽の光を取り込みましょう。食べ物でおすすめなのは、果実のなつめ(生薬名・大棗)。中国では古くから重宝されてきた生薬で、楊貴妃も1日3粒食べていたとか。

「漢方では、なつめはパニック発作や、心が疲れている時にも使います。もし、入手しにくい場合は、同じ仲間のプルーンで代用するとよいですよ」と南雲先生。

 

●アイデア1

なつめが手に入らないときは  プルーンを

なつめの代用品としておすすめのプルーン。フレッシュな物が出回る時期は限られますが、ドライフルーツであれば1年を通して手軽に活用できます。脳内でセロトニンをつくるのに欠かせない、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。

 

●アイデア2

柑橘類の香りで「気」を巡らす

漢方では柑橘類の香りは「気」の巡りをよくするとされ、心身のリフレッシュやリラックスに適しています。冬至にゆず湯に入る風習は、理にかなっていますね。柑橘類を搾った手作りポン酢もおすすめです。

手作りポン酢の作り方

<材料(作りやすい分量)>

ゆず………………1/2個

酢…………………大さじ2

しょうゆ…………大さじ3

水…………………大さじ3

和風だしの素……小さじ1/2

 

<作り方>

❶ ゆずを搾る

❷ ①とその他の全ての材料を合わせて、よく混ぜ溶かす

※ゆずの代わりにグレープフルーツやオレンジを使うと、爽やかな味わいになります

「肌の乾燥」におすすめの食材&食べ方とは?

寒くて乾燥する冬は、肌がかさついたり、かゆくなったりといった肌トラブルが起こりやすくなります。また、女性に多い貧血も、肌の乾燥に悪影響を与えます。赤血球中のヘモグロビンが不足することで、全身に酸素が行き届かなくなり、肌だけでなく髪や爪も潤い不足になってしまうのです。

 

肌の乾燥に対して、漢方では血行をよくするアプローチを行います。南雲先生のおすすめ食材は、松の実と黒豆。松の実は、生薬名を海松子(かいしょうし)といい、漢方では活力アップや血を補うとされる代表的な食材です。料理のトッピングなど、手軽に活用してみましょう。正月のおせち料理に欠かせない黒豆は、「腎(じん)」 (下記参照)の働きを高めてくれる食材でもあります。冬は特に積極的に摂るとよいでしょう。

 

<五行説にみる冬の養生>

東洋医学では、自然界のあらゆるものは5つの性質からなると考えられ、これを「五行説」といいます。人の体の臓器も上図のように5つ(五臓)に分けられ、西洋医学でいう腎臓・肝臓などの臓器よりも広い意味をもっています。五臓のうち冬に深く関係するのが「腎(じん)」で、腎臓や膀胱、成長や発育、生殖にかかわるところです。「腎」の働きが悪くなると血流が悪化し、老化が進んでしまうため、腎を補うとされる黒い食材(黒豆、黒米、黒ごま、海藻類、しいたけ、黒きくらげなど)を心がけて摂るようにしましょう。

監修/南雲久美子先生(なぐも・くみこ)

杏林大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学、関東逓信病院、北里研究所東洋医学総合研究所での研修を経て、1996年より現職。東洋医学と西洋医学を融合した治療を行っている。