稲作、それはまず春先の田んぼ整備から始まった。農教室の田んぼは、冬も水をはっておく冬水田んぼと呼ばれるもの。子どもの頃、稲作を行っていた祖父の田んぼは稲作後に水が抜かれ、お正月はいとこ達との恰好の遊び場になっていた。冬に水をたたえた田んぼは見たことがないと思ったが、近年全国で少しずつ増えており、このような田んぼで育てられたお米や酒米は、その農法を新たな付加価値にしたブランド米として販売されているそうだ。 江戸時代から行われている伝統的な農法の冬水田んぼの主なメリットは、主に以下の3点。 ①雑草が生えにくくなる ②土壌の質向上 ③生物多様性への貢献 稲の切り株が水中で分解されて肥料となるのに加え、微生物を含む多様な生き物が住み着いて柔らかな土の層を作り、生き物の補食目当てにやってきた鳥の糞もまた肥料になる。なるほど、農薬や化学肥料に頼ることなく稲作ができるというわけだ。 とはいえ畔(あぜ)は傷んでいたりするので、田植えの前に田んぼの土をスコップですくって畔に積み、スコップの背でたたいたり足で踏んだりして固める畔塗りを行う。水漏れ対策として土にはベントナイトと呼ばれる粘土鉱物が混ぜられているため、重いのなんの。しかも長靴の底にもねっとりと付着して動きを邪魔する。誰かの「これで3キロくらい痩せないかな」という声に激しく同感。