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マスク生活で気になる「口の老化」。老け顔や全身の筋力低下を招く可能性も

口の渇きや口臭は口の老化のサインです。口は食べたり話したりするだけでなく、表情をつくったりする器官。口の機能が衰えると、心身の老化が加速してしまいます。口腔と全身のアンチエイジング医学を実践している斎藤一郎先生に、マスク生活の今こそケアしたい口の老化対策について聞きました。

口の老化を防ごう

Q:口が渇くのは年齢のせい?

口の渇きや口臭は、唾液の分泌量の低下により起こります。唾液の分泌は自律神経にコントロールされているため、日常的にストレスを抱えていると交感神経が優位になり、唾液の分泌量が低下。口が渇きやすくなります。女性は更年期世代になると口が渇きやすくなるのですが、それは自律神経の乱れと共に、潤いをコントロールする女性ホルモンの分泌量の減少も関係しています。

 

唾液が減ることで口臭も起こりやすくなります。唾液には、抗菌作用や消化作用、食べかすや歯垢を洗い流す自浄作用などの役割があり、唾液が減ると雑菌が口の中の汚れをエサにして繁殖。口臭のもとになる悪臭成分が増えてしまうのです。

 

口の機能の衰え「オーラルフレイル」は、食べ物がかみにくくなったりすることから食欲低下や低栄養状態へと進行、全身の老化につながるとして注目されています。口の渇きや口臭はオーラルフレイルのサイン。早めにケアしましょう。

毛様体筋の説明

加齢によって「かむ力」「飲み込む力」「唾液分泌」などの口の機能は低下。若い世代でも生活習慣によって口の機能が衰えてしまう。

出典:厚生労働省「平成27年・国民健康・栄養調査」

※グラフの数値は、「半年前と比べて硬い物が食べにくくなった」、「お茶や汁物などでむせることがある」「口の渇きが気になる」に「はい」と回答した者、および「左右両方の奥歯でしっかりかみしめられる」に「いいえ」と回答した者の割合。

Q:オーラルフレイルを防ぐポイントは?

オーラルフレイルを防ぐには、「食べ方」を見直すのが一番です。背筋を伸ばし、あごを引いた姿勢で、よくかんで食べましょう。硬い食材を料理に混ぜたり、素材を大きく切ったりすると、自然とかむ回数が増やせます。

 

口には消化器としての役割の他、味覚を感じる「感覚器」としての役割や、表情をつくる役割があります。そのため、口の機能が低下すると、食べる楽しみが奪われてしまったり、ほうれい線が目立つ老け顔になってしまったりします。

 

オーラルフレイルは、全身の筋力低下にもつながります。かむために必要な筋肉は、口の周りだけでなく首から背中にかけて多くの筋肉が関係しているため、かむ力が衰えると、全身の筋力低下にもつながるのです。また、女性が気になるところでは、舌を動かす筋肉「舌骨筋群」が衰えると、首筋やデコルテにしわができやすくなってしまいます。

口の体操

「あ」「い」「う」「え」「お」と口を大きく動かすと唾液分泌を促進、口の老化予防トレーニングに。口元の筋肉を鍛えるのにも有効。声を出さなくてもOK

Q:口元が隠れるマスク生活で心がけることは?

表情豊かに会話をしていると顔の表情筋が鍛えられ、口元の老化も防ぐことができます。しかし、今はマスクをつけたコミュニケーションが日常。自分の口元にもあまり意識が向かなくなっているのでは?

 

マスク生活の口元ケアとしておすすめしたいのが、マスク下でも笑顔をつくること。つくり笑いでも愛想笑いでも構いません。どうせマスクで見えないのだから恥ずかしがらないで。笑顔をつくることで表情筋が鍛えられ、口の老化予防につながります。

 

また、口角を上げることで、幸福感をもたらすホルモンが分泌されるなどの健康効果も報告されています。リアルなコミュニケーションが制限され、ネガティブな気分から抜け出しにくくなっている人が多い今、鬱々としている時や孤独を感じている時こそ、ぜひ口角を上げてみてください。楽しいから笑うのではなく、笑っていると楽しくなる。このことは医学的にも証明されています。

監修/斎藤一郎先生(さいとう・いちろう)

鶴見大学歯学部教授。日本大学歯学部、東京医科歯科大学、米国スクリプス研究所などを経て、2002年鶴見大学歯学部教授に。同大学歯学部附属病院病院長も務めた。日本抗加齢医学会理事。