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若くても起こり得る「スマホ老眼」と、加齢による「老眼」の違いは?医師に聞いた眼の老化を防ぎ方

マスクから表に出ている目元は若々しく健康的でありたいもの。デジタル時代の今は目を酷使しやすく、若い世代でも「老眼」のような症状が起こり得ます。老眼の予防・改善、そして眼力アップのためには、日々のケアが大切。アンチエイジング医療の第一人者である日比野佐和子先生に、眼の老化を防ぐセルフケアについて聞きました。

若くても起こり得る「スマホ老眼」と、加齢による「老眼」の違いは?医師に聞いた眼の老化を防ぎ方

Q:老眼の予防・改善はできるの?

目のピント調節力は年齢と共に衰え、45歳前後になると「老眼」の症状が現れます。視力回復には、ピント調節に関わる眼球周りの筋肉「毛様体筋」のケアがポイント。毛様体筋は、近くの物を見る時は緊張し、遠くの物を見る時は緩むため、近くを見たり、遠くを見たりして毛様体筋をストレッチするようにしましょう。

 

今、現代病として増えているのが、20代でも起こり得る「スマホ老眼」です。デジタル機器などのディスプレイを長時間見続けることを原因とした障害で、老眼と同様にピントが合わせにくい症状が起こります。ただし、近くの物にピントが合わせにくい老眼に対して、スマホ老眼は特に遠くの物にピントが合わせにくい(仮性近視)という症状の違いがあります。

 

加齢による老眼も、スマホ老眼も、ピント調節をしている毛様体筋に問題が生じています。加齢による老眼は、毛様体筋そのものが老化し、伸び縮みしにくくなっている状態。一方、スマホ老眼では、スマホの画面を近くで見続けることで、毛様体筋が緊張し、かたまって緩みにくくなっています。毛様体筋のストレッチや目に優しい生活習慣を心がけることで、いずれの老眼もある程度は予防・改善が期待できます。

毛様体筋の説明

目は距離に応じて、目の中にある毛様体筋という筋肉が縮んだり緩んだりして水晶体の厚さを変えて、ピントを合わせている。近くの物を見る時、毛様体筋は緊張し、遠くの物を見る時は緩むことによって調節している。

Q:目に優しい生活習慣とは?

デジタル機器の使い過ぎで目を酷使していると、目の疲れや痛み、かすみ目といった目の症状だけでなく、ひどくなると頭痛や肩こりなど全身症状にも及びます。また、デジタル機器の画面から発せられる青い光「ブルーライト」は体内時計に影響を及ぼすため、不眠などに陥り、心の健康を乱してしまうこともあります。

 

目の使い過ぎを予防するためにも、1時間に1回は画面から目を離して、目を休ませましょう。また、パソコンやスマホでは近くの物にピントを合わせているので、意識的に遠くを見て、毛様体筋をストレッチすることも大切です。

 

目の疲れの対処法には様々なものがありますが、目元を温めると毛細血管の血流が促され、目だけでなく全身のリラックス効果が得られます。目の縁にある「マイボーム腺」に詰まった脂が溶かされることで涙の蒸発を防ぎ、ドライアイの改善も期待できます。

Q:若々しい目になるには?

目の周りの皮膚は薄いため、寝不足などで血液循環が悪くなると、すぐにくまができてしまいます。健康的な目元でいるためには、目に酸素や栄養素が十分に行き渡るよう、運動や質のよい睡眠で全身の血流をよくすることが大切。目には、体や心の状態が表れやすいことを心得ておきましょう。

 

眼力アップのためには、体の内側からのケアも必要です。子どもの目がイキイキとして見えるのは、白目に透明感があるから。濁るのは老化現象です。また、白目が黄ばんで見える場合は、余分な糖質によって細胞などが劣化する「糖化」が起きている可能性があります。

 

目の老化や糖化を防ぐポイントは、毎日の食事にあります。ビタミンA・C・Eをはじめとした抗酸化作用のある食材を摂り、血糖値が急激に上がらない食事を心がけましょう。こうしたケアは、目だけでなく全身のアンチエイジングにもつながります。

監修/日比野佐和子先生(ひびの・さわこ)

医療法人社団康梓会Y’sサイエンスクリニック広尾統括院長。大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。医学博士。内科医、皮膚科医、眼科医、日本抗加齢医学会専門医。現在、大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学講座特任准教授。アンチエイジング医療の第一人者として活躍。